友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(谷村正義)





「あーはいはい、合コンね。…………は?」

今日も今日とて熱心に競馬中継に耳を傾けていたら、彼女の口から聞き捨てならない言葉が出てきて、時間差で反応する彼。

「……俺の聞き間違いじゃなきゃ、合コンって言った?」
「うん。友達から数合わせでって頼まれて」

詳細は聞いていなかったであろう彼のために、もう一度かいつまんで理由を言えば、彼は分かりやすく機嫌が悪くなっていって。

「……へー、名前って俺というものがありながら平気で合コンとか行こうとしちゃうんだ、ふーん」

ジト目でこちらを見てくる様子から、あ、これ面倒くさいやつだな、と苦笑いする。しかし、だからといって自分に反省点がないとは言えないので謝ろうとする。……と、

「……行けばいいんじゃない」

彼はそっぽを向きながら、開き直った態度を取ってきて。

「ま、俺はそれが原因で心身ともに疲弊して、療養のため今まで以上に競馬に雀荘とギャンブルに入り浸って、オマケに少なくとも数日は拗ねてナマエと口利かないと思うけどね」

それでもいいならいいんじゃない、別に。そう吐き捨てるとまるでもう知らない、といった風に両耳にイヤフォンをし、腕を組んで座り込む彼。
The・大人気ない大人、子供より子供とはこの事。
しかし、つん、と口を尖らせてる姿が可愛らしく見えてしまうのは、惚れた弱みなのだろうか。

彼の耳からイヤフォンを奪い、両手でその膨れた顔を正面から包み込んで、 「無神経だった、ごめん。もう行くって言わないから、機嫌直して?」 と笑う。

まだ足りない、といった表情の彼にダメ押しの口付けを落とせば、どうやら機嫌取りは成功したようで。彼は満足気にこちらを抱き締め、

「……名前には、俺がいるだろ?ちょっとでも目ぇ逸らしたら許さないから」

なんて囁いてくるけど、 そんな彼から目を離せるわけが無い。




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