友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(桐生一馬)





「……ごう、こん」

まず言葉の意味を知らない男その1。
彼のことだから頭の中の選択肢で必死に正解を探しているのだろうけれど、残念ながらそこに答えがあるはずもなく。
多分、世代が違うからなのか、その言葉が出てきたのがお勤め中だったからなのか。
ちょっと気が引けるけれど、簡単に言葉の意味を説明すると、難しい顔をして黙り込んでしまった彼。

「男女の出会いの場……そんな危険な所に……いや、でも名前のダチが困って……」

しばらくぶつぶつと何かを呟きながら思案している彼だけど、不意に閃いた、と言わんばかりの表情をして。

「よし、俺も合コンに行こう」
「……?」

予想の斜め上を行く言葉が降り掛かってくるものだからたじろぐ。

「俺が行けばいざというときお前を守ってやれるし、万が一相手を決める空気になっても、俺となら問題ないだろ?」
「……でも数合わせで私が出るのに、桐生さんが増えたら元も子もない気が……」
「……なら、ダメだ」
「?」
「俺も一緒に参加出来ねぇんだったら、お前は行かせられねぇ」

そう言う彼の表情を覗き込めば、そこには少し真面目な顔が伺えて。

「俺は大事な女をみすみす危険な場所に放り込むような真似は出来ねぇ。飢えた男がどれだけ危険なのか、お前は分かっちゃいねぇんだ。……お前のダチには悪いが、この話は断っておいてくれ」

こういう台詞が格好よくキマってしまうのが、彼のすごいところだと思う。思わず頬に集まった熱を誤魔化すように、彼の逞しい腕に手を絡め、「分かりました」 と微笑めば、まるでそうするのが当たり前かのように口付けを落としてきたので、更に顔が熱くなってしまった。




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