トリックオアトリートって言ってみた(郷田龍司)





「そないな気ぃしてたわ。…これでええか」

そう言って、 ハロウィン限定パッケージのお菓子の詰め合わせを渡してくる彼。わ、めちゃくちゃ理解されてる…こういうイベント系大好きだし絶対参加しちゃうのとても分かっていらっしゃる…
こちらのことを把握してくれているのも、それに付き合ってくれるのも、わざわざ用意してくれているのも好きすぎる。

「…これ、私のために買ってきてくれたの?こんな可愛いのをわざわざ?」
「なんや、気に入らへんかったか」
「そんなことない、すごく嬉しいよ!ふふ、龍司大好き」

なんて微笑みかければ、「菓子程度で現金な奴やな」 と呆れつつも満足気な表情を浮かべる彼。それから手にした菓子袋を再び見つめていると、ふとあることに気付く。

「…ごめん、龍司はこんなに素敵なものくれたのに、私、普通のお菓子しか用意できてない…」
「何言うてんねん。ワシがそないなモン欲しがると本気で思うとるんか?」
「…でも」

少しだけしゅんとして吃っていると、ふとこちらを見つめ、徐々に口角を上げてくる彼。

「…代わりの菓子なら、ここにある」

突然そんなことを言い出した彼の言葉の意味を図りかねて、首を傾げると、腕を掴まれる。そして驚く間もなく、唇を塞がれて。音を立てて激しく口内を蹂躙された後、離れた唇が次には耳元に移動し。

「…甘いな」

低く囁かれ、ふるりと震える。それは今先ほどまで舐めていたキャンディーの味を言っているのか、それとも…。




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