トリックオアトリートって言ってみた(澤村遥)





「ふふ、どうぞ」

お揃いの小悪魔風コーデ&メイクをした遥ちゃんとホテルでハロウィンパーティー…とびきりの笑顔でお菓子を渡してくれるその姿が眩しすぎて思わず涙が出そうになる。ここは天国かな、仮装は悪魔だけど。

「じゃあ私もトリックオアトリート!お菓子をくれないと悪戯するよ?」

そう言ってがお、というポーズをする遥ちゃん。いちいち言動が可愛すぎて心臓がいくつあっても足りない。あざとい。これは小悪魔だ。私のチョイスは天才だった。対等な友達でいたいという遥ちゃんの思いは汲みたいけれど、自分の中に生まれてしまったクソデカ感情は止められない…せめて心の中だけでもただの遥オタクであることを許して欲しい。

「はい、遥ちゃん」
「わぁ可愛い…!素敵な包装もありがとう」

花が咲いたように微笑む遥ちゃんを脳内の一眼レフに収めつつ、合わせてにこりと笑う。

「ねぇ名前さん、写真撮ろう?」

それから撮影会が始まるんだけど、無自覚か努力の賜物なのかわからないが、遥ちゃんの写真写りが完璧すぎてしんどい。え、これ全部データに残るの…正気…?喜びとかそういうの通り越して恐れすらある。

こちらが被写体になったときは、「うん、いい感じ」 「名前さんすごく可愛い」 って褒めまくってくれるから、にやけ顔耐えるのが大変。

ツーショットは遥ちゃんのアドバイスもあってか映える写真が撮れるんだけど、自撮りするときの緊張がやばい。

「名前さん、もう少しこっちに寄って?」

顔近…肌綺麗…睫毛長…匂良…好…語彙力消…

思わず遥ちゃんの方見ていると 「名前さん、カメラはこっちだよ」 とくすくす笑われて、とす、と胸に何かが刺さった…。

それからもお菓子を食べながらおしゃべりしたり、カラオケをしたりと最高の日々過ごす。いつか遥ちゃんに恋人が出来たら、こんなこともできなくなっちゃうのかな、と寂しくなったけれど、帰り際 「また来年、2人でハロウィンパーティーしようね」 と言ってくれた遥ちゃんを見て、先のことより一緒に過ごせる今を全力で楽しもうと思えた。




backtop