あなたが珍しく落ち込んでしまったとき(堂島大吾)





こちらが落ち込んでいることにはすぐに気がつくけれど、とりあえず様子を伺う彼。できれば問い質すことなく言って欲しい、そして自分を頼ってほしい、そんな気持ちがあって。でもこちらはこちらで、ただでさえ仕事が忙しい彼に余計な心配はかけたくない思っているから噛み合わない。

しばらくするとついに痺れを切らした彼が 「……俺には、話せないことなのか」 と問う。

「え……?」
「……今日、何かあったんだろ?」

そう打ち明ける彼に驚くと同時に、罪悪感に苛まれる。彼を思って話さずにいたことが、逆に彼を傷つけてしまっていたのかもしれない。気まずさに思わず視線を逸らすと、彼はそれをどう受けとったのか、こちらの両肩に手を添え、顔を覗き込んでくる。

「……俺のためにも話してくれないか?名前が辛いと、俺も辛いんだ」

こちらを案じる言葉と、どこか不安の滲む声に、胸が詰まる。その嬉しさと、彼を安心させる意図も含めて、ありがとうございます、と微笑めば、彼はほっとしたように目尻を下げ、頭をひと撫でしてくれた。




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