「どうやらお悩みのようで」
芝居がかったような声色で話しかけてくる彼。
「お巡りさんが話聞こっか?」
戯けたような態度を取っているけれど、それは面と向かって訊ねられるより気軽で話しやすいだろうという彼なりの気配りで。彼の意図通り、それほど躊躇せずに何があったかを話すことが出来る。
聞いてくれているときは、口数は少なくとも、普段の彼からは考えられないほど優しい声や言葉が聞けるから胸がいっぱいになる。珍しがってついまじまじと顔を見つめてしまうと、
「……真面目な俺ってそんなに珍しい?」
軽くエスパーだし、不満げな顔で返されたのが面白くて思わず笑ってしまう。たく、といいつつ、こちらに笑う余裕ができたことに安堵する彼も、同じように軽く笑みを零す。
「……上手いこと言えないけどさ、名前は一人じゃないんだからちゃんと俺を頼ってくれよ? ……ま、できなくても今日みたいに俺がちゃんと気づいてやるけどな」
そう言ってポケットに入れていた手を出し、よしよしと撫でてくれる彼に、言いようのない安心感が募った。