壮絶な過去を抱える遥ちゃんの前ではこちらの悩みなどちっぽけなものに思えて。それにせっかく遥ちゃんと一緒にいる時間に暗い話をしたくないから、自分からはどうしても打ち明ける気になれない。そうして沈んだ気持ちを心の奥底に隠してると 、
「……名前ちゃん、もしかしてなにかあった?今日はなんだか元気がない気がして……」
ふと、心配そうな、寂しそうな表情をしてこちらに語りかけてくる遥ちゃん。気づいてくれたんだ……と嬉しくなると同時に、心配かけてしまったのが申し訳なくなる。
「……大丈夫だよ、ありがとう遥ちゃん」
精一杯の笑顔を見せるんだけど、遥ちゃんはなぜかより一層悲しそうな顔をする。すると遥ちゃんはおもむろにこちらの手を取り、両手で優しく包み込んで。
「……私ね、一人で抱え込むことがすごく辛いの知ってるんだ。でも、話すとすごく楽になるのも知ってる……だから私、力になりたいの。大好きな名前ちゃんが辛い思いしてるを放っておくなんて出来ないよ」
手のひらから伝わってくる温もりが、心からこちらを案じる言葉が、胸にじわりと溶け込んで沈んだ気持ちを癒してくれる。
「でも、全然楽しい話じゃないし……」
簡単に気持ちが変えられなくてそんなことを言うと
「私、名前ちゃんと楽しい話がしたくて一緒にいるわけじゃないよ。だから安心して?」
と遥ちゃんは首を傾げてこちらを覗き込み、安心させるように微笑んで。その言葉で塞き止めてたダムが決壊しちゃうんだけど、遥ちゃんは何も言わずにそっとこちらを抱き寄せて、ゆっくりと背中を摩ってくれた……。