友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(錦山彰)





「……おい、今なんつったよ」
「友達に数合わせで合コン来て欲しいって頼まれたんだけど、行っていい?」
「……」
「……えっと、沈黙は肯定とか?」
「んなわけねえだろバカ!普通にダメだ!何考えてんだお前は!?」

まさか自分が大事に大事に愛してきた彼女がそんなことを言い出すなんて思いもしなくて、思わず頭を抱える。怒りとか嫉妬とか、そういう感情の前にまず驚愕、愕然、衝撃といった感情に苛まれる。

友達からの頼みだとは分かってる。でも、それでも、心のどこかで “なんでキッパリ断ってくれなかったんだ” なんて思ってしまう自分がいて。ぐるぐると考えを巡らせた結果、どうやら一つの答えが出た模様。

「……まさか、俺を試してんのか?」
「……え、」

予想外の返答で、彼を本気で悩ませてしまったのだと悟るけれど、暴走した錦山彰は誰にも止められない。

「俺の器の大きさ計ろうってんだろ?……まぁ、そりゃ桐生だったらきっと許すんだろうよ。でも、俺は……」

話全く関係ないのに桐生さんとか出てきちゃうあたり、彼のキャパはもうとっくにオーバーしている。慌てて声をかけようとすると、不意に彼がこちらを抱き寄せてきて。

「……やっぱ、 譲れねぇよ。どんなに器の小せえ男だと言われようが、こればっかりは譲れねぇ。……合コンなんて行くな。お前は俺の女だろ?」

懇願するような声なのに、その言葉はあまりにも情熱的で。力強い抱擁なのに、その手つきは壊れ物を扱うかのように繊細で。自身の想像以上に彼の愛は深いものだったと知り、歓喜と罪悪感で感情が乱れてしまう。

「……うん。錦山くんだけの彼女だよ。だから、合コンは行かない」

そう言って彼の背に手を回せば、「……悪ぃな」 と彼が小さく呟いた。

……それは何に対しての謝罪なのか。行かせてやれなくて?器が小さくて?言わせてしまって?それとも、愛が深すぎて?

「錦山くんが謝る必要なんてないよ!私こそ、嫌な思いさせちゃってごめんね」
「……いいんだよ。ナマエも付き合いってもんがあるって分かってるからな」
「……それでも、私は錦山くんの気持ちを優先したい。次からは、絶対そうする」

耳元で、彼の息を飲む音がする。僅かな沈黙の後、彼はこちらを抱き締めたまま、こめかみに口付けを落としてきて。

「……名前はいつも俺の欲しい言葉をくれるんだな。やっぱ敵わねぇよ」

どこか嬉しそうな声色でそう言う彼が、愛しくて仕方ない。
本当に敵わないのは私の方だと内心思いながら、今度は口元に向かってくる彼の唇を受け入れた。




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