拉致された恋人の救出に向かったら、男に乱暴されかけていたときの彼(堂島大吾)





「……テメェら、誰の女に手出したのか分かってるのか」

相手がとりあえず彼の様子を窺っていると、迷いなく銃を取り出したので驚愕する。

「今すぐ離れてそこに並べ。……悪いが射撃の腕には自信があってな。妙な真似をしようものなら、確実にぶち込まれることになる」

彼の眼光とオーラに気圧されて、相手は黙って彼の言う通りに動く。彼は相手に銃を向けたまま、恋人を背に隠すように立つと、いつの間に入口付近で控えていた部下に視線で部屋に入るよう促し、連れて行け、と一言指示を出す。そして途端に抵抗を試み始めた相手に向かい、

「安心しろ、今回は解放してやる。……ただ、誰に喧嘩を売ったのかは覚えておいて貰わなきゃならねぇ。それなりの覚悟はしておくんだな」

と告げれば、相手は大人しく連れてかれていく。

最後の一人が部屋から出ていくのを確認した後、彼は勢いよくこちらを振り返り、そのままきつく抱き締めてくる。

「……名前、すまない!」

彼の悲痛な叫びが廃ビルの一室に響き渡る。

「俺が…俺が悪いんだ…名前のプライベートを邪魔したくないと思って、護衛はつけないよう指示をしたから…」
「そんな……大吾さんのせいな訳ありません」

そう言うも、彼は抱き締める腕を強め、苦しそうな吐息を漏らすだけで。

「……大吾さん。顔、見せてくれませんか」

彼は伝えた通りに腕を緩め、こちらを見つめる。そこには、先ほど威厳に満ちた態度と冷徹な眼差しを浴びせていたのが嘘のように、眉を下げ瞳を揺らす彼がいて。本当に心から思ってくれていることが分かるから、胸が締め付けられてしまう。

「……本当のことを言うと、せめて生きていてくれと思っていたんだが…これは相当堪えるな」

彼の視線が下の方を向いていたことで言わんとしていることを察する。

「……こんな私でも、まだ好きでいてくれますか?」

俯きつつ問いかけると、不意に方頬を彼の掌で包み込まれて。

「好きに決まってるだろ。…今更そんな疑問、抱く必要ない」

どこまでも優しく深い愛に、心も体も包み込まれていった。




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