拉致された恋人の救出に向かったら、男に乱暴されかけていたときの彼(郷田龍司)





まずはこちらを拘束していた男を蹴り飛ばして、羽織っていたコートを被せてくれる彼。急いで服を整えながら、コートで前を隠せば、彼の匂いが鼻を掠めて、安堵から泣きそうになってしまう。

彼の方は、あっという間に部屋にいた男たちをなぎ倒していくが、ひとつひとつの攻撃の重みが半端ないので相手は即座に虫の息。内心こんなもんじゃ到底許されないと思っている彼だけど、この場はとりあえず恋人が優先。

「もう少し灸据えとくか?」
「……私は、大丈夫」
「ほうか。…ほな、帰るで」

そう言うと、彼は軽々と横抱きして、家まで運んでくれる。

「…龍司、ごめん。私、汚れちゃったみたい」
「……何言うてんねん。名前は少しも汚れとらん。これまでもこれからもずっと、綺麗な名前のままや」

そう言って優しく抱き締めてくれる彼に、涙がぽろぽろと溢れてしまう。彼以外に触れられてしまった悲しさ、その瞬間の恐怖、そして全てを受け止めてくれる彼の優しさが、涙を留めてくれない。

彼はこちらが涙を流す様を見て、男たちに対する憎悪を膨らませるも、それは彼女の望むことではないと、必死に気持ちを抑えている。

それからしばらくして少し落ち着くと、彼は擦り傷などちょっとした怪我の治療をしてくれる。

「メシ食うか?」
「少し食べようかな」
「風呂は?」
「うん、入りたい」

こんな感じで何でも聞いてくれる彼に胸があたたかくなるし、幸せを感じる。

「他は?何でも言うてみい」
「えっと……じゃあ、一緒に寝て欲しい、かな」

そう言うと、彼は少し固まるも 「そないなことでええんか」 と愛おしそうに目を細めてきて。

その慈愛に満ちた表情に幸せを感じつつ、こくりと頷けば、そのまま愛しい彼に抱きしめられながら、 あたたかな微睡みに沈んでいった……。




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