友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(真島吾朗)





「ご、合コンやと!?いま合コン言うたか!?合コンいうたら、あれやろ?合コンとは名ばかりに、男女が入り乱れる乱交パーティーやろ!?アカンアカン!絶っ対にアカンで!」

正しい言葉の意味を知らない男その1。
どこでどう間違えればそんな見当違いな知識を得てしまうのか。しかもここまでノンブレスでここまで言ってきたものだから、反論するタイミングが全く見つからなかった。

「もう、どこでそんな知識拾ってきちゃったんですか?合コンっていうのは、───」

と、一般的に知られている合コンの意味を説明してみるも。

「アホ。それやったら大して結果変わらんやろ。送り狼コースまっしぐらや」
「いやいや、そんなことになりませんって。自己紹介して1杯飲んだら帰るつもりですし……」

彼があまりにも過剰な発言をするから思わず否定してしまったけれど、内容だけ見ればそれは、食い下がってるようにも見えてしまって。ハッとして彼の顔色を伺うと、感情の読めない表情に胸が跳ねる。思わず視線を逸らし、束の間の平穏を保とうとすると、

「……気が変わったわ。行ってきてもええで、合コン」

なんて声が降ってくる。

何を言われるのかと思っていたのでそれには拍子抜けして。おそるおそる顔を上げると、そこにはにんまりとした笑みを浮かべる彼がいるから、更に頭が混乱する。

本当に、彼は何年ともにいても読めない。でも、1つだけわかること。それは、この表情をするときに彼が考えていることは、だいたいろくでもないということで……


……


時は流れて合コン当日。
……嫌な予感というのは、よく当たるもので。

え、いやなんで?というかどうやって……!?と、内心パニックになりながら、男性陣側の席に当たり前のようにいる彼を見つめる。ばっちりと目が合えば、してやったりという顔を浮かべてくるし、もう何が何だか分からない。

それから真島さんは私が何か話せば尽く褒めちぎり、自分に話が振られたら必ず 「名前ちゃんはどうなんや?」 と語尾につけ、完全にこちらをロックオンした男のムーブをして。これには周りも何かを察したのか、席移動をした際には、真島さんと二人で話せるような配置にさせられてしまった。

「……まさかここまでするとは思いませんでしたよ」
「ヒヒッ、ワシの姿見た瞬間の自分、傑作やったわ」

悪戯が成功した子供のような表情をする彼に、ため息が漏れる。意味もなくマドラーを回し、これからどうしようと思案していると、ふと携帯の通知が来て。

【ワシらは今から抜けるで】

と彼からメッセージが届いてるからびっくりしていると、「少しええか」 と若干大きめの声を出す彼。

「何や名前ちゃん気分悪ぅなったようでな。1人で帰る言うとるけどさすがに心配やし、ワシもついてくことにするわ」

そう言うと、彼は労るようにこちらを立ち上がらせて、「ここ、置いとくで。釣りはいらん」 と何枚かの1万円札を机の上に乗せると、出口へと足を進める。

「案外楽しかったで、ほな」

それを最後に、二人で居酒屋を出てしまう。
そのときの私はというと、当然彼のなすがままに従って。不安そうな視線を送っていた友人には、後でしっかり連絡しなくてはと心に決めつつ、「……これからどうするんですか?」 と聞けば、悪どい笑みを浮かべる彼。

「決まっとるやろ。今日の戦利品を家まで持ち帰りや」
「……え」
「持ち帰りまでが合コンやねん。よーく覚えとき」

いや、帰るまでが遠足、みたいなこと言わないでください。しかも最近まで合コンのごの字も知らなかった彼が、一体何を言っているんだか。

若干呆れつつも、大人しくついて行く自分も自分で。この上なく変わり者な彼だけど、合コンに行く恋人に対してここまでの行動を起こせるのはこの世界中を探してもきっと彼だけなんじゃないかと思うと、嬉しくなってしまって。

そんな彼の隣を歩けるこの幸せを噛み締めながら、大人しく持ち帰りさせられることにした……。




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