「…ふぅん…なるほど。うん、ありがとう」
いつもの感じでにこやかに受け取ってくれるけど、なにやら勝手に推測して勝手に納得してるのが怖くてさっそく不穏。
え…なんか鳥肌立ってきたしさっさと退散しよう…と思ったけれど、まぁそうはいかず。
「ところで、俺って名前ちゃんにとって何番目の男なの?」
で、でた! 秋山さんの突然笑顔で爆弾投げてくるやつ…!言葉の意味が分からなすぎて?しかない。
「えっと、秋山さん…? 何番目とは…?」
「違うの? いや、だって今まで俺に散々期待させておいて、その結果義理チョコなんでしょ? 一体このペースで何人誑かしたのかなって」
顎に手をあてて不思議そうな顔をする彼だけど、これ絶対怒ってますよね? じゃなかったらこんなに無慈悲な言葉出てきませんよね? というか秋山さん期待してたんですか? もう分からない…この人のこと何も分からない…でも、そういうところにも魅力を感じてしまうのは、惚れた弱みと言うのだろうか。ぐるぐると思考を巡らせて、どう誤解をとこうか考えていると、ぷっ、と吹き出す声が聞こえてきて。その声の主が誰なのかは、想像に難くない。
「いやあ、ごめん。ちょっと悔しかったからからかってみただけだよ。…でもまさか、そんなに困った顔になるとは思わなくてさ…くく」
……。普通に酷すぎて真顔になる。
しかし彼なら、からかってる可能性も本当のこと言ってる可能性もあるから、なにもかも疑いにかかるわけにはいかないのが難しいところ。
ひとまず今回はからかっていたということで一安心していると、彼が「はい」となにかを差し出してくる。プリザーブドフラワーが添えられた可愛らしいボックスには、 高級チョコレートのブランドのロゴが書かれていて。
「…秋山さん、これは…?」
「俺から名前ちゃんへの気持ち。あー…こういうの何て言うんだっけ。確か逆チョコ?で合ってる?」
片手で頭をくしゃりとしながらそう言う彼。
…もう。本当に、この人のことはいつまで経っても分からないし、きっとこのさきだって分からないのだろう。けれど、最後にはいつだって、こちらのことを喜ばせてくれるから。
「…私、秋山さんが好きです」
自然と零れ出した言葉に、
「俺も、名前ちゃんが好きだよ」
と返して口付けてくれた彼と、願わくばずっと共に居たいと思った。