友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(堂島大吾)





「ダメに決まってるだろ」

眉間に皺を寄せて、キッパリと言い切る彼。二人でいるとき、滅多にそのような表情を見せたことがないから、少し動揺してしまう。彼はそんなこちらの様子を目視すると、更に表情を硬くして。

「……もしかして、俺が許すと思っていたのか?」

正直、思ってないとは言い切れない自分がいた。彼はいつもなんだかんだ甘くて、ここまでダメだと言い切ったのも、今回が初めてだったように記憶している。彼の問いに何も言えなくて言い淀むと、彼はそれを肯定と捉えたらしく。

「悪いが、俺は名前が思うよりもずっと独占欲が強いんだ。例え数合わせだったとしても、他の男が名前に不躾な視線を送ると思うと、とてもじゃないが耐えられそうにない」

今まで知らなかった、彼のどろりとした感情を垣間見た気がして、背筋がぞくりとする。でもそれは嫌悪感などではなくて、もっと別の。そう、歓喜に近いようなもの。 想いを伝えあって、口付けをして、身体も重ねたのに、まだ知らない彼がいるのだと思い知らされた気がして。今以上に彼に溺れてしまう未来が見え、僅かに恐怖を覚えた。

「……心の狭い男だと笑ってくれていい。でも、どうか嫌いにならないでくれないか?」

どこか縋るようにこちらを見ている彼だけど、その瞳の奥には、先ほど見せた嫉妬心がちりちりと火花を散らしている。その目に見蕩れながら、「嫌いになるわけ、ないです。むしろそこまで大吾さんに愛されてるんだなって、嬉しくなりましたから。友人には、ちゃんと断っておきますね」 と伝えて笑みを見せれば、彼はほっと息をつき、目元を緩ませた。

「……こりゃ、普段からもっと分からせてやらねぇとな」

……そんなセリフが聞こえた気がしたのは気の所為だったか。




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