友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(西谷誉)





「...ごうこん?新しい遊園地の名前か何かかいな」

言葉の意味を知らない男その2。
彼の場合は間違いなく若者言葉が分かっていないのが理由だろう。意味を簡単に説明してみれば、一体何をどう取ったのだろうか。彼が、

「な、何や名前ちゃん……おっさんのワシを捨て置いて、ピチピチの若い男としけ込むつもりなんか!?」

なんて言ってくるから思わず反射で「はい?」と聞き返してしまう。

「アカンで!名前ちゃんは死ぬまでワシの女って決めてんねん。浮気ならせめて、ワシが逝った後にしたってくれや」

彼のくれた言葉は概ね嬉しい。元々女遊びの激しかった彼がここまで一途に愛してくれるだなんて、未だに夢のようだと思うことがある。
……けれど、後半に言った台詞は、さすがに聞き捨てならなくて。

「……西谷さん。私、この先西谷さん以上に好きになる相手なんて現れません。だから、浮気なんて絶対に有り得ませんから」

……あと縁起でもないこと言わないでください。
自分で言ってて辛くなりながらも、小さくそう零せば、彼はこちらの視線に合わせて屈み込んで、優しく頭を撫でる。

「……嬉しいこと言うてくれるなぁ、おおきに。こないなこと言われもうたら、ワシもおちおち死んでられへんわ」

例えそれがこちらを落ち着かせるための気休めだったとしても、彼が “先” を見る言葉を口にしてくれたことが嬉しくて。にやける口角を抑えつつ、彼の頬へ軽く口付けをする。
一瞬、目を丸くした彼だけど、次には私がした以上の深い口付けが返ってきて。やがて酸素が薄くなり、彼の胸を軽く叩けば、名残惜しそうに彼の舌が下唇を滑った。

「……アカン、勃ってきてもうた。名前ちゃん、明日仕事早いんか?」
「ふふ。いえ、明日は遅番ですよ」
「おぉ、せやったら朝まで付き合うてくれるな?」

彼の問いに、 もちろんです、 と答えれば、 彼はこちらの腰に腕を回し、臙脂色のスーツへと体を引き寄せると、 ホテル街へと足を進めた。

……もともと合コンの話をしていたのだと思い出したのは、翌日シャワーをしていたときのことだった。




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