「おはようございますあるじさまー!あっさですよぉ!」
「おはよう、今剣。今日も元気ですね」
すぱんと景気のいい音を立てて私の自室の襖が開け放たれる。両手を大きく開いて満面の笑みを浮かべていた今剣は私の姿を見て大きく頬を膨らませた。
「あー!あるじさまもうきがえおわってる!きょうこそぼくがおてつだいしようとおもったのに!」
「えっ……あぁ、ごめんなさい」
「あるじさまはいっつもはやおきです!たまにはねぼうしてもいいんですよ!」
「ありがとう、でもいつも光忠が起こしてくれるの」
台所を担当している光忠は朝ごはんを作るために誰よりも早起きだ。私も一緒に起きて準備を手伝うと申しこんだことがあったけれどそれはやんわりと断られた。
朝ごはんの準備の途中で起こしてもらうのが申し訳なくて、なにかお礼をしたかったけれど、光忠は首を横に振るばかりだった。そのかわり、その日に着る物を選ばせてほしいなと笑顔を浮かべて言われたので、私のその日にきる洋服は光忠が選んだものがほとんどだ。それがお礼になっているかわからないけれど、光忠が嬉しそうなのでよしとする。
私の朝は大体こうして始まる。光忠に起こされて、着替えていると短刀の誰かが声をかけてくる。そうしているうちに光忠か歌仙が朝ごはんができたよと呼びに来る。
朝ごはんをみんなで食べて、私からその日のスケジュールを発表する。
出陣、遠征、内番、休暇…そんなことを繰り返しながら少しづつ任務をこなしていく。
ただし、あまり無理はできない。私は他の人にくらべて少し霊力が足りない。ちょっとした特殊能力があるから審神者として動いていられるけれど、手入れや鍛刀なんか繰り返すとぶっ倒れてしまう。
少しでもみんなの負担にならないよう、確実に。それをモットーに私は今日も審神者業を頑張るのだ。
お昼を食べて縁側に座って遠くではしゃぐ短刀たちを眺める。その中心では一期一振が困ったように笑いながら弟たちに手を引かれていた。
「主、少し落ち着いたら買い物にいこう」
「あ、髭切。うん、そうだね、付き合ってくれてありがとう」
「構わないさ。弟の……えっと……昼丸もいるから重いものだって問題ないよ」
「ありがとう、助かる。膝丸だけどね」
「あぁ、うん。そうだったね。そんな感じの名前だったね」
髭切のその返答をきいて、私が思わずふふっと笑うと髭切も笑う。遠くでは兄者!と叫ぶ件の膝丸がこちらにむかって小走りで向かってきているところだった。
「えー!俺も主と買い物いきたーい!」
「お前は一昨日行っただろ」
「一昨日は一昨日!今日は今日なの!安定のばーか!」
「は?なに?やんの?喧嘩なら買うけど」
「こらこらこら。やめなさい。清光も今度また買い物一緒に行こう、だから今日はガマンね」
「えー……主がそういうなら我慢するけど……」
「お土産買ってくるから」
「主がそうやって甘やかすからこのバカが調子にのるんだよ」
「安定もごめんね、お土産買ってくるから拗ねないで」
「すっすねてない!」
顔を真っ赤にした安定に見送られながら、私は万屋へと向かう。両隣には源氏の兄弟がいて、髭切はきゅっと私の手を握った。
「えっ髭切?」
「迷子になってしまうといけないからね、手をつないでおこう」
「兄者、主は幼子ではないのだぞ」
「うらやましいなら弟もつなげばいいじゃないか」
「うっうらやましいなど…!」
そういいながら、膝丸は目線を泳がせて、そしてゆっくりと空いている方の私の手を握る。その様子の膝丸を見て、髭切は満足したように笑った。
「ふふ、素直なのが一番だよ」
歌仙や光忠に頼まれた食品や、薬研に頼まれた薬などを購入して私たちは並んで帰路につく。重いものはほとんど源氏兄弟が持ってくれているので私は軽いものばかりだ。荷物を持ったことで手はつなげなくなってしまったけれど、髭切が常に微笑みながら私のことを見つめていて、膝丸はそんな兄と私のことを心配しながら歩いていた。
本丸への入り口の扉を開ける。そこを潜り抜け道を歩くと自分の本丸が見えてくる。
「あっ主君!おかえりなさいませ、お荷物お持ちいたします」
「おかえりなさい……あの、もうすぐごはんですよって言ってました」
「も〜!ボク寂しかったよ!」
短刀たちにわらわらと囲まれて、前田君や平野君荷物を預け、空いた手を乱ちゃんに握られる。
手を引かれ、本丸の中へと戻ると今にはみんなが廊下へと顔を出して、おかえりとしきりに声をかけてくれる。
あったかい、やさしい、私の本丸。
「ただいま、みんな!」