memo

※七海と付き合ってる前提で総受けまでは行かないけど総構われ風味。
好意抱いてる子もいる

七海(高専)

季節外れの花火に火をつけて大騒ぎする先輩たち。火の粉を浴びそうで眉を顰める自分と、隣で大笑いしている灰原。バケツの隣でタバコを咥える家入さんのすぐそばに居たはずのもう1人の先輩が見当たらなくて、ぐるりと周囲を伺った時だった。七海、と小さく呼ばれて振り返ると屈んで背を丸めて、小さくなったその人が居た。おいでおいでと手招かれるままに近寄ると細い花火を手渡される。あいつらうるさいから、と楽しげに笑いながら、順番に線香花火に火をつけると2人並んで小さな火花を見守った。
ちりちりと小さく音を立てるそれを見つめながら、かわいいね、俺これがいちばんすき。なんて溢す横顔があまりに綺麗で、吸い込まれるように見つめながら思わず、私も好きですと早口に返事をした。


伏黒

五条先生に押し付けられた書類を持って医務室を訪れると、中にいた家入さんが「ちょうどいいところに」といつものように表情を動かさぬまま言った。
手に持った書類を抜き取りながら、こいつソファかベッドに運んでやってくれない?と指をさした先には、椅子にもたれかかるようにして眠るあの人。思わず動揺して、え、と声を漏らすと無理そうならいいよ、どうせすぐ起きるだろうし。と言われて全力で「無理じゃないです」と否定した。緊張でそわそわする心臓を押さえつけて、彼の近くに寄る。柔らかな黒髪に顔が近付くと、清潔なシャンプーの香りがして、さらに心臓がざわついた。落ち着け、と自分に言い聞かせて、細い肩にそっと触れる。抱き上げるということの重大さに気付いたのは今更になってだった。
やるじゃん、なんて家入さんの軽口が、扉の方から聞こえる。後よろしくな、と遠ざかる声に言われて、はい。と答えながらベッドへ歩みを進めた。カラリと扉が閉まる音が聞こえてくる。彼が軽いだろうことは想定の範囲内だったが、それでも思いの外軽々しく持ち上がってしまったな、と逆に落ち着いて冷静になった頭で考える。昔は逆に抱き上げられていたのだと思うと不思議な感覚になった。触れている部分から伝わる体温に、心臓が馬鹿みたいに大きな音を立てていて、わずかな距離しかないベッドまでの間が無限にも、一瞬のようにも感じられた。そっと清潔なシーツの上に出来る限り揺らさないように彼を下ろす。ベッドがキシ、と小さく音を立てて、自分の中で変なスイッチが入った気がした。覆い被さるような体制から動けぬまま、彼の顔を見つめ続ける。順に顔のパーツを視線で追っていって、最後に淡く染まる唇に辿り着く。ごくり、と思わず生唾を飲んで、無意識に顔を近付けようとした瞬間。視界の端に銀色に光る何かが見えて、自分の全身からスッと熱が消え失せるような感覚がした。キシ、と音を立てて離れると、細い首を守るように華奢なチェーンが首に絡みついているのが見えた。その先に、指輪があることを知っている。彼が誰かのものである証。目を細めて、まるで睨み付けるようにそこを見つめていると、医務室がカラリと開く音がした。


伏黒

子供の頃、唐突に五条先生に紹介されたその人。忙しい合間を縫って様子を見に来てくれていることには幼いながらに気付いていて。めぐみくん、と柔らかなあの声で名前を呼んでもらうのが好きだった。時々、姉の代わりに作ってくれた料理が好きだった。そっと繋いでくれた、暖かな手が好きだった。
だから、久々に訪れた彼の首にかかっているチェーンの先にある指輪を見た時、言い表せられない感情で押し潰されそうになった。高専に入ることが決まって荒んでいたこともあり、姉に叱られることが増えて、――それから、姉は深い眠りについてしまった。
自分では何も解決できない問題に心をぐちゃぐちゃにされる感覚は不愉快で、気持ちが悪くて、ある日姉の見舞いに来たのだという彼の腕を思い切り引いて、自分の腕の中に閉じ込めた。めぐみくん?と動揺した声をあげたその人は、思い出の中の彼よりも随分頼りないなと思った。背なんてもう変わらない。ぎゅっと抱きしめた体は、もっと鍛えろと五条に言われた自分より更に薄い。不安のあまり甘えたのだと勘違いした彼の腕がそっと動いて、頭を撫でる。その優しい手つきだけは変わらなくて、つい、涙が出そうになった。


伊地知

医務室の扉をノックして、カラリと開く。不在かと思われた室内に居たその人は、緩やかな笑顔を浮かべながらこちらを振り返って、そして瞬間的に目を見開いた。常から大きな瞳がこぼれ落ちてしまうのでは、と馬鹿なことを考えながら促されるままに椅子に腰を下ろす。細くて長い指が、壊れ物に触れるように優しく、確かめるように頬に触れた。傷がチリリと痛む。消毒の準備をしながら、彼は何があったの、と心底心配した声音で尋ねた。非術師と揉めて殴られたのだと、深刻にならないように伝えると、眉を下げながら切れた口の端を消毒していく。再びそっと頬に触れられて、真正面からまじまじと見つめられてしまい、綺麗な顔が至近距離にあると思うとどうにも緊張してしまった。妙な汗をかいた気がする。やっぱ腫れてるね、と言いながら氷嚢を用意する背中をぼんやり見つめていると、伊地知はなんにも悪くないよ、と声をかけられて、なんだか漸く息を吸えたような心地になった。自分で思っているよりも疲れていて、傷付いていたのかもしれない。ありがとうございます。と返事をすると、細くて長い指の背で頬を撫でてから氷嚢を押し当てられた。


七海

七海の手を取って、じっくりと眺める。分厚い手のひらから伸びる、節くれ立った指は自分と比べると随分と太い。関節のひとつひとつがくっきりと目立って、なんというか、万人が想像する"男らしい手"をしているな。と思う。学生時代はもう少しすらりと細くて、まさしく今の自分のような手をしていたような記憶があるので、日々の戦いの中で作り替えられていったのかと、小さく残る傷跡を撫でて、分厚くなった指先の皮膚をなぞった。
七海、と名前を呼んでから、手の甲に口付けてみる。貴方がこれ以上傷付きませんように。小さな祈りを込めた唇は、突然意思を持って動き出した指先に掬われてしまった。


歌姫

歌姫先輩。と背後から呼ぶ声の、なんと愛らしいことか。五条にムカついていた心が一気に安らぐようだった。硝子とはまた違う癒しである。振り返るとそこにある顔がまた癒しをもたらす。
あんたはかわいいね…と思わず言うと不思議そうに首を傾げた後に歌姫先輩の方がかわいらしいですよ。と瞳を細らせて笑う顔が眩しくて、思わず陽の光を遮るように手をかざしてしまった。


七海

夜明けまで続いた闘いが明けて、彼は怪我人の処置を終えて。帰宅したのは互いに昼頃だった。ソファにぼすんと腰を下ろした己の隣に、控えめに腰を下ろした彼は、まず細い小指を投げ出していたこちらの指に絡めると、膝を抱えた。それからしばらくして、怪我しなかった?沈黙が支配する部屋に、ぽつりと小さな声が落ちる。かすり傷程度です。と答えると、そう。とぽつり。またしばらく沈黙が続いて開かれた唇が五条がね、と言った。五条が夏油のとどめ、刺したんだって。どんな感情で発せられた言葉なのか、いまいち汲み取れない声色で、彼が言う。抱えた膝に顔を埋めながら、大きなため息をひとつ。掬い上げられなかった命を悔やんでいて、それでいて、その原因であるかつての級友を、呪えないでいる。そんな葛藤が、絡んだ小指にこもる力から滲んでくるようだった。
冷えたその指が、手が、少しでも暖まるように包み込む。伏せられたままの頭がこてんと傾けられて、体重がかかった。
七海が生きててよかった。と小さく漏らすので、無事あなたとまた会えてよかったです。と言葉を返した。


伏黒

子供ながらに綺麗な人だと思った。すらりと伸びた細く、白い指が印象的で、五条さんとの訓練の後、家入さんの居ない日に呼び出された彼が細かくついた小さな傷たちを、その細い指で優しく手当てをしていく様子が好きだった。少し冷たくて、けれど暖かい手。壊物を触るみたいに頬にそっと触れては、長い睫毛に縁取られた瞳を伏せて傷口を隠していく。
そんなことを思い出したのは、あの頃と同じように「恵くんは綺麗な顔してるんだから」と言われたからだ。「あんたの方が綺麗だ」と、喉元まで出かけた言葉は、騒がしく部屋に訪れた同級生のせいで声になることはなかった。


虎杖

肩に小さな重み。画面に集中していたから、少し驚いて、重みの正体に視線を送る。ほんの少しだけ寄りかかったちいさな頭から綺麗な黒髪が重力に従ってさらさらと流れていた。間近で見る肌は白くて、いつだったか釘崎が言っていた「肌の透明感」とはこういうことなのだろうと思う。睫毛長、と思いながら顔を覗き込むとすう、と小さな寝息が聞こえて心臓がざわついた。動揺が如実に現れたのであろう、手に持っていたツカモトくんが一瞬で目を覚まして、頬に綺麗なストレートが入る。穏やかに眠るその人を起こしてはならないと必死で声は堪えたが、体が揺れたことでぱちりと瞳が開いてしまった。


七海

あなたってヒゲ生えるんですか。と、つるりとした肌を見つめていると、思わず声に出てしまった。む、と唇を尖らせた彼は失礼な、とでも言いたげに生えるもんと言った。もんって。
ヒゲのみならず、彼の体毛が薄いことは知っている。裸なら何度も、それこそ穴が開くほどに見つめているので。自分も然程濃い方ではない上に、色素の薄い体毛をしているから、目立たない理由はわかる。けれど彼は黒い頭髪に、加えて透き通るように白い肌をしている。少しでも生えていようものなら、すぐに目立ちそうなものだ。つい、と頬に触れて、そのまま顎のラインまでをなぞる。やっぱりつるつるである。触り心地がよくて撫でていると、目の前の彼は拗ねたようにふい、と顔を逸らしてしまった。