都合のいい話で引き付け、甘い言葉でパーソナルスペースまで入り込み、優しい男を演じて彼女をボクの部屋まで誘い込む。本当に、本当に呆れるくらいにみっともなくて、自己嫌悪でどうしようもなくなるくらいに情けないのに、普段ボクが生活している空間に彼女がいるという事実がどうしようもなくボクを高揚させる。
フェアじゃない、そんなことをしても彼女の唯一になれることはない。頭の奥に微かに残る理性の声さえ小さくて、無視をしようと思えば聞こえないふりをしてしまいそうなほどで。
彼女がふらりと立ち上がる。ボクの集めた石や普段使っている鏡を覗き込む姿、そのすべてを焼き付けるように見つめていると、彼女は驚いたような顔をしてボクから目を逸らした。
どうして。ボクはきみの瞳をもっと見ていたいのに。
咄嗟に伸ばしたボクの手は難なく彼女の腕を捉える。触れたいと願った彼女の腕は細くて、握りこんだ手のひらは想像以上に小さくて、柔らかくて。胸を押し返す力なんてボクの身体には全く効かなくて、あっという間に彼女をベッドの上に組敷けば、彼女の香りとベッドの香りが混ざってくらくらした。まるで、一緒にベッドにいるかのような、錯覚。
「きみは男の部屋に上がるということがどれだけ危ないことなのか、分かってない」
ひどい責任転嫁だ。下心がないわけもなく誘い込んだのはボクなのに、まるでやってきたきみが悪いようなことをボクは言う。彼女の顔に影を落とすボクの顔をみて、きみはそうやって申し訳なさそうに眉を下げる。ああ、ボクは本当に最低な男だ。きみへの友情をとっくに超えた愛情を持て余して、どうしようもなくなって、こんなことをするボクをいっそきみが手酷く振ってくれたなら。
最後まできみを悪者にしてしまおうとする自分自身が一番嫌いなのに、きみが目で追い続ける彼がそれ以上に嫌いなんて、ボクは本当にみっともなくて情けない、きみを愛している男だよ。