「きみがそうやってボクに何気なく触れるたびに、いっそ思い知らせてしまおうかと何度も思ったよ」
ぎしりと軋むベッドの音がやけに響いて、生活感のほとんどない部屋に聞こえるのは私とダイゴの声だけで。電気に照らされて明るい室内なのに、私の顔にかかる影は暗くて、そしてその影に隠れたダイゴの表情も、どこか暗いように見えた。
私の手をシーツに縫い付けた手のひらがゆるりと動き、それからもう一度ぎゅうっと握りしめる。ダイゴの手のひらは思ったよりも大きくて、かけられた体重で押し付けられてしまえば身動きひとつ取れない。大きめの指輪の感触が、やけにリアルに指に伝わった。
「逃げられないよね。ボクが体重をかけてるから」
「に、にげ、られないです」
「ボクが力を込めれば、きみのことだってどうとでもできてしまうんだよ」
左手側の石が飾ってあるショーケースが電気を反射してきらきらと光る。反射したダイゴの色素の薄い髪の毛が透けて、暗い表情に少しだけ光が差した。
部屋にひとつしかないベッドに私を組み敷いたダイゴの真剣な瞳が、じっと私を見下ろしている。目は逸らされない。耐えきれず先に視線を逸らしたのは、私の方だった。
「ボクを見て」
「、っ」
いつもの優しい穏やかな声とは違う、力強くて有無を言わさないような声色に、恐る恐る視線を戻す。いつものダイゴじゃないみたいだ、と口にしようとして、きゅっと引き結んだ。今それを言ってしまったら、ダイゴを余計に逆上させてしまうような気がして。
逆上といっても、あくまでもダイゴは穏やかな風でいたいのだろうけれど、その瞳の奥に滲む色に、私は目を逸らしたくて仕方がなかった。熱のこもった、かつてダイゴが写真を見せてくれた、べにいろのたまのような、深い赤。何かを燃やすような赤は、じっと私を見据えている。
「……きみの手を握るこの手のひらだって、きみに体重をかけるこの腕だって……肩だって、首だって、身体だって……全部が全部、きみとは違う」
「…………」
「きみより大きくて、力もある。……きみが怖がることだって、出来る」
「……ダイゴ、」
「なのに、きみは……ボクを意識してはくれないんだね」
はあ、とダイゴが詰めていた息を吐き出して、私に覆い被さっていた身体を起こす。体重は離れて、逃げ出そうと思えば逃げ出せるのに、それができない。否、しようとしないのは、自分でも正直分からなかったけれど。
ダイゴ、と私を遠くから見下ろすダイゴにゆっくりと手を伸ばす。落ちた前髪の隙間から見える瞳は、いつの間にかべにいろのたまではなくなっていて。名前を呼ぶ声に、ダイゴが小さい声で答える。「なに?」その声は、さっきまで私の至近距離で呟かれていた声よりも小さかった。