その夜のコト2

 そのあと。
 衝立を立て直して(三之助はすっかり忘れていたが、彼が引っかけて倒したのであった)、あらためて、同じ布団に入ると、三之助を異様な恥ずかしさが襲った。
 せっかく望みがかなったのに、引き寄せるどころか、触れることもできない。対して、四郎兵衛は眠気に負けたのか、すっかりくつろいだ様子だ。この状況を打開しようと、三之助は口を開いた。
「しろ」
 話せば少しはマシになるかも知れないと思ったのだが。
 返って来たのは「あい」という、ひどく眠たげな声。三之助は思わず吹き出し、(まあ、いいか)とあきらめた。
 今日がだめでも、また次をつくればいいのだ。
「寝るか」
「あい」
 三之助は一度起き上がって、油の火を消す。
 そうして戻ると、四郎兵衛がもぞもぞと擦り寄ってきた。

 寒かったのか。
 寝ぼけているだけなのか。
 なんなのか。

 左側にぬくもりを感じながら、三之助は再び緊張することになった。
 とくに、触れている左腕などは、ぴくりとも動かせない。

 柔らかい髪。
 規則正しい息づかい。
 たまにもれる「うー」とか「あー」とかいう寝言。

 全部が気になって仕方がない。
 予想通りの苦しさに耐えながら。
 三之助はぐ、と目をつむり、自分に言い聞かせた。


 今は、このあたたかさだけあればいい。


 それは盛大な嘘だったが、そうでもしなければ、眠れそうになかった。

prev top next