おろかもののみち
駅についたという汽車から流れる案内で目が覚めた。眠ろうとは決めたが、それほど眠気は無いと思っていた。だが、寝ていないというのは、案外身体に効いていたらしい。らしいというのは、きっと煩かったであろう汽車の中でも寝てしまっていたからである。寝ている内にハイジャック事件は無事解決したのだろう。でなければ、駅に止まることは無いだろうし、あんなに怯えていたはずの乗客が安心したような表情で汽車から次々駅のホームへと降りていくはずが無い。乗客のみんなが汽車から降りるのを待ち1番最後に汽車から降りれば軍人と憲兵がハイジャックの後始末をしていた。
正直、寝起きでまだ少し眠たい。目を擦っていれば首にひんやりとしたナイフがあてがわれた。何っ!っと動かせる範囲で後ろを見れは“青の団”のリーダーである、たぶん。実際に“ 青の団”のメンバーを全員見ているわけではないし、知らないのだが他に捕まっている人達と比べると風格的にはリーダーっぽい。私の後ろの方からうわぁ!!ぐあっ!!っと言う声が聞こえていたが、この男が原因であろう。左腕の機械鎧についている仕込みナイフに血が付いている。
あー、どうしようかなこれ。
憲兵の手を振りほどき私服の私を人質にとろうとしたのだろう。この男には悪いが人選ミスである。ガタイの良さ通り力はあるみたいで抵抗しようと力を入れて体を動かそうとしてもなかなか解けない。その最中、少し首を切ってしまい、
「痛っ!」とその男を見れば「大人しくしておけ」と言われてしまった。まあ、人質になってしまったのだし?可愛い子ぶって助けてとか言ってみようか。なんて、軍人として有り得ないけどと考えていれば、
「この女がどうなってもいいのか!」
男が叫び、その声に気付いたロイ・マスタング、エドワード・エルリック等が振り返り、天野小夜を視界に入れた。
「小夜?」
「リザ、やっほー。久しぶり、元気してた?」
「元気してた?じゃなくて、あなたその状況。」
「その状況って?」
リザ・ホークアイとは士官学校に通っていた時の同級生であり友達である。とは言ってもお互い勤務地が違っていたし、仕事も忙しかったため全然会ってはいなかった。会っていないどころか、連絡もまともに取っていなかった。うん、変わっていない、美人のまま。
自身のミニスカートの中、太ももに隠してある仕込みナイフをとりだし、相手の足に突刺す。突然の私の行為に男は怯むが分厚い筋肉のせいかぐっと痛みに耐えるため、そのままナイフを押し込みグルッと抉るようにナイフを動かす。男の叫び声と共に緩んだ腕から抜け出し、背中に周りひと蹴り。地に伏せた所を押さえ込む。こんなこと昔なら出来なかったはずなのにもう、手馴れたもので、滑らかに一呼吸で終わらせる。
「こんな状況のこと?」
一瞬で変わった状況に男は驚いたが、まだ諦めない。力を振り絞り暴れ、わたしの手を振りほどくと向かう先は一つ。何処にそんな力があるのかと思うがその足で走り出す。終わりが見えれば、尚更それを抗おうと自分で思った以上の力が出せる。
「大佐!」
浮かれていたのだろう。目の前に彼がいたのだから。自分の気づかないうちに気が緩んでいたのだろう。いつもなら、こんな失敗はしない。「大佐!」と叫べばマスタング大佐の指パッチンがなり、爆発が起こった。男の叫び声があがり、軍人が押さえる。
「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。そしてもう一つ“焔の錬金術師”だ、覚えておきたまえ。」
すごい。
生で見る指パッチン、そして爆発。ただ格好いいって思っていた錬金術、自分でも錬金術というものを勉強し使えるようになってみると焔の錬金術師、ロイ・マスタングの錬金術にその技術に感動した。
「そうだ、君は?大丈夫かい?」
「はっ!明日から中央部から東方司令部に異動になりました、“水泡の錬金術師”天野小夜です。地位は中佐です。全然、大丈夫です。」
いつの間にか距離を詰められていたらしい。目の前にいるロイ・マスタングから、声をかけられた。身長差のため、彼を見上げると彼のどこまでも真っ黒な瞳にわたしが写っていた。ああ、彼が大佐がロイが、私を見ている。
「君があの“水泡の錬金術師”か。爪が甘いな。」
「はっ!申し訳ありませんでした、今後気を付けます。」
「そうしてくれたまえ。少佐、そろそろ戻るぞ。」
「また、明日ね小夜。」
「うん。」
やっと、会えた。
彼の背中をみていると、涙が頬を濡らしていた。
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