おろかもののみち
あの汽車ハイジャック事件から数日が経ち、事後処理も終わりを迎えた。どうやら、あの汽車ハイジャックにハクロ少将がのっていたらしい。あーそういえばそうだっけ?そういう描写のってたかもしれないと、何年もここにいるのだ、記憶はだいぶ曖昧である。曖昧どころか忘れている。わたしに重要なのなは大佐のことだけ、とはいっても、ちゃらんぽらんなわたしが自分の記憶に自信なんて持てるはずないのだから、大佐に関わるお話のいくつを覚えているのかは分からない。
東方司令部の皆は誌面で見ていたように、やはり優しかった。リザは昔の話で花を咲かせまた一緒に居られるのがとても嬉しかったし、ハボック(ハボックさんと呼んでいたのだが呼び捨てで構わないと断わられた)に分からないことは色々と教えて貰っている。ブレダさんファルマンさんには此処に慣れたか?とか困ったことは無いですか?とか色々と気にかけてもらっている。フェリーさんはよく休憩を忘れてしまう私に声をかけてくれている。一応今まで中央部で仕事をしていたのだし皆さん少し心配症だなあ、なんて思うけれど殺伐とした中で仕事をしていた中央部にくらべるとアットホームな雰囲気が少しまだ慣れない。仕事に至ってはしていることはそう変わらないのでここでのルールや物の場所、建物内の場所さえ覚えてしまえばすぐに慣れてしまった。
「大佐、コーヒー入れたのでどうぞ。」
「ああ、すまない。」
大佐とは、いつもこんな感じだ。同じ部屋で仕事をしている時、ちらりと大佐を見てドキドキする。書類を見ている時に口元を少し触っているのを見ると口寂しいのかなと思いコーヒーを入れる。大佐のだけだとおかしいので自分の分と同じ部屋にいるメンバーの分のコーヒーもいれて渡す。こうして静かに仕事をしている時もあれば、何処かに行っている時もあるしサボリに行っている時もある、東方司令部にいても大佐の隣にいるのはリザなわけで、まあ、予想通りというか当たり前というか、あまり大佐とは必要以上の会話をしない。
今まで、大佐がいない中で仕事をしていたのだ。それが部屋の中を見回せば大佐がいる。書類を見れば中には大佐の文字がある少し癖のある大佐にしか書けない文字。大佐のコップに大佐のデスク。大佐がここにいると感じさせてくれるこの空間にいることが何よりも顔を綻ばせる。これ以上何を望むというのだ。
「小夜が来てからの一番の変化は、このコーヒーだな。」
「そお?」
大佐の次にハボックにもコーヒーを渡すと、コーヒーをのんだハボックが話す。ここに来る前からコーヒーは好きだった、やはり専門店で買った珈琲豆は絶品だが、コンビニやスーパーに売っているコーヒーでもそれなりき美味しかった。それに比べこっちは少し質が悪い。中央にいた時に見つけた、こっちでも美味しいと思うお店の珈琲豆をここにも置かせて貰っている。
「うまい。」
「なら、良かった。」
「大佐も言っていたぞ、コーヒーが美味しくなったってな。」
「うそ!大佐が!」
「なんだか、嬉しそうだな。」
「へへっ。」
あーもー、そんなこと言われるとニヤけてしまう。出来るだけ顔にださないようにって、意識をしても隠しきれていないだろう。それじゃあ、これからも、コーヒーは張り切って入れてしまうな。
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