翌日、私は朝早めに家を出た。


学校の場所覚えてるかな?とか思ったりしたけど、意外と大丈夫だった。まあ高校生に戻ってるんだもんな。頭より体が覚えていたようだ。


あ、昨日包平とLINNEを交換した。おはようとか、そういう挨拶があると本丸時代を思い出して嬉しいし安心する、らしい。

だから家を出るときに『おはよう』『いってきます』と送っておいた。ちょっとドキドキした。







学校に着いてくつ箱にローファーを入れ、上履きに履き替える。自分のクラスまで辿り着くと荷物を置き、そのままその足で保健室に向かった。



……そう言えばこんな朝早いと、うぐはまだ勤務時間じゃなくていないんじゃ……なんて考えながら失礼します、と声をかけて保健室に入ると、なんと既にうぐがいた。今まだ7時半なんだけど……。



「うぐ!」


そう言って抱き着けば、おっと、なんて言って受け止めてくれる。そして私に向き合って、大包平とは会ったか?と聞いた。


「うん、会ったよ!ほら、これLINNE交換したの」
「そうか、それは良かった。おや、返信が来ているな」
「えっ?あ、本当だ」


うぐに言われて見ると携帯のランプがピコピコと光っていて、画面を点ければ包平からのメッセージが来ていた。


『気を付けて行ってこい』


「ん、ふふ……へへ」
「なんだ、変な笑い方をして」
「んーん、返事が来たのが嬉しかっただけ!」
「ふっ、そうか……紺、良かったな」
「へへ、うん!」






じゃあ授業があるからまた後でね、とうぐに言ってクラスに戻った。すると相当頬が緩んでいたのか、クラスメイトに指摘されてしまった。


「紺ちゃん、昨日休んじゃって寂しかったんだからね!」


そう言ってぷりぷりと頬を膨らますのは、舞ちゃん。普段は素っ気なかったりするのに、こういう時は素直になる可愛い奴。……懐かしいなぁ。


「それに紺ってば、なんかすっごくニヤニヤしてる!……も、し、や」


私の頬の緩みを指摘してニヨニヨとこちらを見てくる清乃にな、何よー、と返すと、肘で小突かれた。何じゃいな。


「彼氏できたんじゃないの〜?」
「えっ、紺ちゃん、彼氏!?」



えっ待ってバレるの早い。


誰よ〜なんて両サイドからグイグイ聞かれるので、この学校の人じゃないからね、と言っておいた。えっ茶飲みウグイスじゃないの?ってそこの男子ちょっと説明しなさい。


「い、いや、だって部活で転んだから保健室行ったら、お前とウグイスが抱き合ってるのが見えたから……俺入るのちょっと待ってやったんだぞ!」
「それが誤解なんだって」


誤った認識を大きな声で言い散らす男子に笑顔で威圧をかけ、うぐは昔からの馴染みなのだと主張する。それを聞いて、舞ちゃんも確かにと頷いた。


「紺ちゃんはこの学校の"人"じゃないって言ってた。ってことは、生徒はおろか先生でもないと考えるのが妥当よ」
「なるほど……」


なんだか私を置いて周りが盛り上がっているようで、どうしたもんかねこりゃ、と私はため息を吐いた。








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