1 放課後。 秋になったばかりだというのに、帰り道には冷たい風が吹いていた。 隣には名前がいて、特に何を話すでもなく、いつもの通学路を一緒に歩いていた。カツカツ、と二人分の革靴の踵が音を鳴らしながら進んでいく。 付き合い始めてかれこれ二ヶ月は経つだろうか。これといったスキンシップもないままここまで来てしまった。 だが、年頃の男であれば少なからず性欲というものがある。俺だって例外ではない。しかし、名前に触れるきっかけをいまいち掴みかねていた。 いい加減、行動で示さなければ。そう思いながらも、いつも喉元で足踏みをする言葉の数々に、承太郎自身も少し苛立ちを感じていた。 「…手」 やっとの思いで振り絞った言葉はたった一言に留まった。名前はといえば、言葉の意図がよくわからなかったのか、こちらの様子を窺っている。 「手がどうかした?」 「…いや、」 そう返されると急にこっ恥ずかしくなり、言葉に詰まってしまった。言葉で示すのは諦めた方がいいか、と俺は思った。だったら、気付いてくれるまで手を差し伸べるほうが、まだ恥ずかしくはないだろう。 そう思いすっと手を差し伸べると、彼女は目を丸くして俺の顔を見た。あまりまじまじと見られると恥ずかしさが込み上げてくる。それを誤魔化すために、逆の手で帽子を深く被ると、彼女はくすくすと笑った。 「何が可笑しい」 「承太郎も、秋は人肌が恋しい季節なのかな?」 「馬鹿げたことを言ってるんじゃあねぇ。オラ、手を繋ぐならさっさとしろ」 俺がぶっきらぼうにそう言うと、名前は手をそっと繋いだ。恋人同士というよりも、さながら仲のいい兄弟と言った方がしっくりんじゃないかと、少し複雑な気分になった。 少し考えた俺は名前の手を離し、指を絡めるように握り直した。所謂恋人繋ぎだ。名前は吃驚したのか、指を離そうとしたが、俺はそれを許さない。 「なんだ、嫌なのか」 「そ、そういうわけじゃあないよ」 「なら手を離すな」 「う…」 名前の顔は下を向いていてよく見えないが、耳がほんのり赤くなっているところから察するに、真っ赤になっているのだろう。 そのまま歩いていると、少し落ち着いたのか静かだった名前が喋り出した。 「…承太郎が」 「ああ?」 「こんなに大胆だとは思わなかったわ。この二ヶ月間、触られもしないから好かれているのか少し不安だったけど、そんな不安も吹っ飛んじゃった」 そう言うと彼女は笑顔を見せた。その笑顔に惹き付けられ、唇に触れるだけの接吻をした。 「な、」 「俺は大胆、なんだろ?」 そうやって意地悪く笑うと、名前は再び下を向き、馬鹿ね、と静かに呟いた。 思春期の衝動と唇の微熱 [ <<Jogio top ] |