2 次の日、名字さんとの約束のためにお弁当を用意した僕は、昼休みになるのを心待ちにしていた。こんなにも昼休みが待ち遠しいと思うことは小学生以来じゃないだろうか、と授業中にふと考え、苦笑いを浮かべた。 昼休みになると、鞄からお弁当の入った袋を取りだし、真っ先に特別教室棟の屋上を目指した。階段を昇る度に気分が高揚していく。 屋上への扉が見えると、僕はすぐさまドアノブを握り、右へと回す。と、背後から声をかけられた。 「花京院くん」 「、!名字さん!」 誰かに見られたのかと動揺したのも束の間、声の主が分かると僕は安堵した。僕が振りかえると、僕のすぐそばに名字さんが。僕の心臓は跳ね上がる。 「花京院くんがくるの、そこに隠れて待っていたの。吃驚した?」 「ああ、少しね。…名字さんに驚いたというよりも、気付かなかった自分に驚いた、かな」 それほど浮かれていたということか。隠れていたのが名字さんじゃなくて、DIOの手下のスタンド使いだったなら、僕は今頃怪我をしていただろう。気を引き締めなくては。 「さて、お昼ご飯にしましょうか。」 そういうと彼女は僕を急かした。僕は急いで扉を開け、彼女をエスコートし、扉を閉めて鍵をかけた。誰にも邪魔をされたくはないと、そう思ったのだ。 名字さんは昨日と同じ場所に座ると、壁に寄りかかりながら鞄の中から袋を取り出した。僕も彼女の隣に座ると、お弁当箱を袋から取り出した。すると、彼女はクスっと笑った。 「花京院くん、昨日食堂へ向かったから、今日は購買で何か買ってくるんじゃないかと思ったのに。お弁当持ってくるなんて意外だわ」 「そ、そうかな」 「でもよく考えたら、私花京院くんのことよく知らないんだし、意外もなにもないわね。あ、そうだ。折角だしおかず交換したいな。なにかもらってもいい?食べたいものあったらあげるから」 僕は名字さんのお弁当を眺めた。そこには色とりどりのおかずが詰め込まれている。どれも美味しそうだ。僕は一分程迷った末に、卵焼きを箸でつまんだ。彼女はそんな僕を見て不思議そうな顔で質問した。 「卵焼きでいいの?花京院くんもお弁当に入ってるけど」 「定番なおかずだからこそ、人によって味が違うからね」 「言われてみれば納得ね。じゃあ私も卵焼きをもらおうかしら」 そう言って名字さんは、僕のお弁当箱から卵焼きを箸でつまみ、口にした。彼女の唇が卵焼きの形に沿って柔らかそうに形を変えるのを見て、僕は生唾を飲んだ。そして、それに気づかれないようにもらった卵焼きを口にしようとしたとき、つまんだ筈の卵焼きが消えてることに気付いた。驚き、辺りを見渡すと、そこには卵焼きを食べる承太郎の姿が。 僕は、この二人だけの空間に突然現れた侵入者に、少し眩暈を感じた。と、同時に今日の自身の注意力の欠如には頭を抱えざるを得なかった。 [ <<Jogio top ] |