第9話
今日も雨が降る。
朝の日差しを拝むにはまだはやくて、相変わらず雨が降り続けジメジメとする。
教室内も外も埃っぽい匂いが漂っていて、排気ガスが雨と一体化してもっと空気が悪い。
昨日の朝乾かそうとした空気も今じゃ意味がなくなっている。
雨が傘に当たる音を聞きながら歩く。
教室に着いた時のジメッと感は好きじゃない。机にぬってあるニッキの匂いや湿って手を動かすたびに皮膚が引っ張られる感覚。あれから、カバンもずっとビニール製のカバンだ。
ローファーに当たる雨と傘に当たる雨の音を聞く。
コツンだかカツンなのか、それともポッと短い音なのかわからないが傘に当たる雨の音は好きだ。
ガードレールの向こうに見える街は相変わらず、灰色の何かに喰われてて、もしかしたらこちらが喰われているのか。それとも、両方とも喰われているのか。ならば、絶滅だな。と笑った。
妙に生える白の白線と生き生きとしてる蒼紫の綺麗な紫陽花。
バス停のベンチは、プラスチックの壁と屋根で守られている。
ベンチに腰掛けて座る。のんびりと静かな。時間は、期待とともに心を静かに踊らせる。
彼女にあった。雨限定の友達。
今じゃ、連絡だってできるんだから限定じゃないかもしれないけど。それでも、限定の友達。
もう、梅雨が終わってしまうから雨限定の友達は終わってしまう。梅雨は時々7月に入っても降ることがあるそうだ。そうならばいいな。それがいいな。
雨は好きじゃない。
ジメジメしてるし、髪の毛だって爆発してしまう。それでも、傘に当たる音や生き生きとしてる紫陽花を見れるからそこは好き。
のんびりしているとそのうち見えて来る、赤。
今日はなんの話をしようか。お菓子を持ってきたんだよ。友人がね、勝手に開けようとしてて慌てて止めたんだ。なんて。あの子はきっと、微笑んで楽しそうに話を聞いてくれるんだろうな。私は、その笑みが好きだ。
ああ、見えてきた。目が映えるような。白線よりも映えている。赤色。
雨は好きじゃない。
傘に当たる音は好きだし、紫陽花を観れるのも嬉しいけど、
「こんにちは、時雨さん」
あなたに会えるからもっと好き。
「こんにちは、水無月さん!」
だから、今日も雨に待つ。あなたを待つ。