第8話
今日は曇りだった。でも、午後から雨が降るらしい。
去年は雨が全く降らなかったから、少し安心感がある。夏になったら、プールにだって行きたいしいろんなことがしたい。
そういえば、梅雨が明ければもう少しで夏休みだ。
「夏休み?あー、なにしようかな」
友人とお菓子を食べながら話す。どんよりとした空と昨日の湿気が雲に遮られ地上で彷徨っている。おかげで、とても湿っていてジメジメする。傘だって玄関に干すしかなくて、お父さんの傘と並べて乾かすからお互いの傘が埃っぽい匂いがして朝から2人でげんなりした。
教室も埃っぽい匂いが漂っていて、机の板は拭いても拭いても木の汚れが取れそうだった。
「夏休みって、いつから?」
「7月の中旬?」
「うーん、なにしようかな」
「夏休み後のテストに備えなちゃだし」
「そうだね・・」
どんよりと気分が落ちた。2人してため息をつく。
「まぁ、今日は午後から雨でよかったんじゃない?」
「なんで?」
「午後からの方が、会いやすいでしょ。水無月さん」
友人の言葉に
「あー、そうだ、ねぇ」
思い出したかのように言った。最近、いつも会っていたから会えることに特別感を感じなかった。忘れてた。そうだ。水無月さんは雨の日限定の友達。連絡先を交換したけど、そういうことじゃなくて、雨の日に会える水無月さん。
「はやく、学校終わらないかなぁ」
そう言えば、現金なやつだなぁ。と帰ってきた。
あまりにも雨が降るから忘れてた。きっと明日も雨だろうと思っていたから忘れてた。今日みたいに午後から雨が降るからそんなにバスが遅れてないこと。ラインに連絡を入れたけど帰ってこないこと。私は水無月さんを待った。待って待って待っていたら、バスが来て。今日は会えなかったとバスに乗ってしまったこと。会えないって、寂しいんだと今更ながら思い出す。悲しいな。寂しいな。バスに乗って窓から見える薄らいだ灰色の街を見る。
バス停に着いて傘をさしたところで、ラインに連絡が入った。
ーごめんなさいね。今日は、委員会の仕事だったの。
水無月さんからだった。
ー気にしてないよ。
ーごめんなさいね。
ーううん!私も待ってなくてごめんね。
ー気にしないで!
ー水無月さんも、気にしないでね。
ーありがとう。また、明日ね。時雨さん。
そう帰って来た連絡に、少し待って
ーうん。また、明日。水無月さん。
そう返した。
忘れてたことが沢山あった。もしかしたら、雨が上がれば会えなくなるかもしれない。
委員会もなにも関係なしに、会えないかもしれない。疎遠にだってなるかもしれない。
だから、私は『限定』に惹かれた。今じゃ当たり前だ。
それでも、水無月さんに会えるのは楽しみだから。明日は雨が降りますようにと、星どころか空さえも見えない空に願う。