雲が縦にモコモコと伸びていく。
立体的な雲は夏の象徴としてよく夏に大きく活躍をする。
緑が広がるこの地域では蝉が嫌という程鳴きまくっていた。太陽の光も殺すかのように体に刺さってくる。休憩を挟みながら、進む。道をしらべながら日焼け止めを塗り直し、水分補給。この水筒の中のお茶はもう、三本目のペットポトルのお茶が入ってる。

「あった、標識」

私のスマホから、凪のスマホに道案内をチェンジしてやっと、つきそうなところまできた。もう、あたりが薄い琥珀色をしてきた。あと少しで学校が通常なら終わる時間だ。

「さて。あと何キロだ?」

車の通りが少ないここでは並んで自転車を走らせることができる。
どこか懐かしい夏のみに見られる琥珀色の風景。緑の田んぼも、草木も、空も琥珀色に染まっていく。

「さあ、頑張ろう」

もう、お互い話をしながら走ってはなかった。もともと、話しながら走ってはなかったがもう話すこともないし、体力を使うからやめた。
こんなところ、普通はロードバイクだろ。とか考えながら標識がさした道を進んでいく。長い坂道に差し掛かったところで、もう朝のことは気にしなくなった。琥珀色の世界を駆け上っていく。普通の自転車の私たちにはきつい坂道。これまでもたくさんあったが、なんとか登ってきたし下るときほど幸せな時はなかった。
凪も前かがみになって漕いでいる。顎から汗をこぼしている。ああ、夏だなと頭のどこかで思った。

「ふうー。登ったぁ!」

凪が先に登り切って私が後から登り切った。はあはあ。と肩で息をしながら額から頬を伝って顎から汗を下に垂らした。

「ねえ、みて」

凪も肩で息をしながら行った。凪は笑顔で指を正面にさしている。前を向いてみれば

「うみ・・」

青く光るそれは、海だった。
潮の香りがここまでくるような大きな風が吹く。とても心地がいい。琥珀色した懐かしい風景に私は、来たんだ。と思った。

「急ごう!澄乃!後少しかもしれない」

「ええ、急ぎましょう!」

体力のことなんて考えてなかった。ひたすら海を目指した。どれたけ冷たいんだろう。どんな風に感じるんだろう。学校をサボって、駆け抜けた道のりは長かった。潮の匂いはいつか思い出となってくれるのだろうか。坂道を下る。綺麗な道路となったところではたくさんの車とすれ違う。

「ついたー!」

とうとう海にの近くまでついた。
潮の香りがキツかった。青い海はここでは少しオレンジ色だった。

「ここら辺にしようか」

凪にいわれるまま、適当に自転車を橋の下に止める。高速なのか国道なのか。免許を持ってない私たちにはわからない大きな橋がある。上では仕事やどこかへ行くのか帰るのか車がビュンビュン通る。

「すみのー!」

海だー!と自転車をきちんと止めずに放り投げて走って行った凪が私を呼ぶ。

「今行くわ!」

裸足になって、頭に巻いていたタオルをとった。汗の匂いがして、私が一生懸命になっていたのだと知った。私は、こんなに汗をかいたことがない。なぜならそんなに一生懸命に何かをすることはないからだ。

「冷たい!」

海は冷たかった。足首から足下が冷えていく。靴下で蒸れて暑くなっていた足は一瞬で氷になった。凪はずっと足踏みをして水しぶきを上げていた。

「すみのー!」

凪の方を見れば、バシャッと水をかけられた。服にかかった程度だか私もやり返した。
ふと、水平線をみると日が輝いていた。琥珀色に輝いている夕陽は光の道を海に浮かべる。キラキラと輝く海は言葉にするには失礼な気がした、

「叫べた?」

凪が言う。足首を海に隠した姿は海から生まれたようだった。
水色のシュシュは、少し黄色が混ざってた。

「そ、うね。私にしては叫んだと思うの。とても、楽しかったわ」

心がスッキリした気がした。親に怒られるかもしれない。非行に走ったと思われるかもしれない。でも、それでも。これは思い出だ。

「まだだよ」

凪が言う。笑顔で

「夏はこれからだから」

帰り道。もう、暗くなって来てた。上にあった橋は国道だったようでそれを伝って帰ればすぐだった。それでも、すっかり夜になっていて親からは遅かったねと心配されたと同時にすごい日焼けしているからそんなに日が強かったのかとか、なんでそんなに濡れてるのと心配された。友達と水浴びをしていたと言ったら驚いた顔をされて嬉しそうな顔を母は浮かべた。疲れた顔をしていたからか、ご飯の前にお風呂に入らされた。
お風呂で鏡を見れば、頬は赤く。腕は少し茶色くなっていた。すぐに水を体に浴びさして冷やした。意味がないかもしれないけど。
きっと、これは2人の思い出でこれからも思い出ができるんだと思う。
あの坂道の上から見た青い空の背景に浮かぶ入道雲の生え際に立つ水色のシュシュとポニーテールと海。私はきっと忘れない。忘れることはできないだろう。


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