ベビー5はメイドとして城の管理を任されている。
メイド長とかではなく、メイド長、執事、シェフなど様々な立ち位置の内容や人間を管理しているのである。
つい最近ここに連れてこられた白髪の宝石眼をもつ彼女は彼女とは違う立場に配属された。それなのに、夕飯の準備になったら何処となく現れディナー隊に混じり片付けまで行う。昼間はキーパー達に混じり窓拭きを淡々と行い、朝はモネに秘書の仕事を叩き込まれてる
この前、スートの間にて幹部たちに混じり会議の参加をしたそうだ。昇進というのか仕事が早くて驚く
みんなから少しずつ必要とされつつあるが、見つけたのは若様だが仲良くなったのは私が1番最初なのだと自負している
掃除を滞りなくできているかチェックしながら城を練り歩く。城内はタバコはなるべく吸わない。ススが落ちる
廊下の絨毯や花壇、ガタンと音を立てながらリネンカゴを引くメイド達
うちのファミリーには大柄が多いためシーツの張り替えは4人で行う。人手が余計に取られるとため息をつく
下っ端どもは見回りをしつつ手伝う奴らもチラホラ
箒を一緒に持つ奴もいれば、雑巾も持つ奴、重たいものを代わりにやってあげるやつ
静かにされど忙しなく動くメイド達をみながら、管理についての記録、悩みどころを探しては見つけ頭を悩ませる。元々勉強など得意ではないし、必要とされればすぐに落ち、短期で血の気の多い女だ。なにより人を見る目が少しというよりも大幅に落ちているベビー5は深く考えたりすることが苦手だった。
ふと窓を見ると何かがキラリと反射した。自分が立つ窓側から庭を挟んで下に位置する通路窓から光りが反射している
白い髪に青い瞳。忙しいのに昼の日課である窓を拭きを担ってくれている。流石だと王族従事者を頭の中で褒める。いや、元か?いや若様も今じゃ国王だ
一通り見終わり、内部について考え事を始める。
メイドたちはドレスローザの国民であり別にドンキホーテファミリーの一員でも、下っ端供のような『なんでも受けられる』立場ではない。
若様の雇用相手たちであり、自分の部下。きちんとした給料にきちんとした働く環境を置く必要がある。下手なことで若様の評判を下げるわけには行かないのだ。
今ベビー5に立ち塞がっているのは、3つ。
各部署の人数編成。教育環境。募集について
ドレスローザを5年ほど前に略奪したが、その時の夜部隊だった使用人たちはリク王に殺されたかシュガーによって人形にされたので、半分くらいはいない状態だった。それを増やすことは簡単だったが、その環境を整えるのは割とその場しのぎだった。ベビー5も当時はもっと幼く。ほぼモネに言われたことを従順として行なっていたので、いざ自分が見て問題や行き詰まりを感じるようになったもののそれをどう対処したらいいのかは全くわからなかった。
人が増えたり減ったり。でも、人数はそこそこ潤ってる。だが本当にこのままなにも変革なく進めていいのか。昇進させることはできるが昇進枠も空いてはいない。人手はいつだって欲しいのだ
ドンキホーテファミリーは海賊であって、貴族じゃない。考えもやり方も野蛮だし残虐さもある
それを見て初めのうちは畏怖して残ってたものたちも人が増えては辞めていってしまった。
そこでそろそろ人数の調整や募集したものたちやこれから育てる必要がある者の環境を整える必要があった
ずっと悩んでてモネにも相談したが、いまいちこちらの仕事を全て把握しているわけではないモネは淡々と必要事項を述べるだけで、あまり得策とは行かなかった。
メイド長や執事長、シェフらの意見を聞きまとめてモネに聞いたとしても。あー、そこは仲悪い。とかそれはちょっとどうかなぁといった人間模様が頭を邪魔してきてあまり進まなかったし、ちょっと面倒だった
5年も経てば内部も変わるしそろそろ大きな変革を持ってもいいかもしれない。だがらベビー5はそういうのを考えるが苦手だったし、面倒だった
どうしたものかと書類を見ながら歩いていると、視界の隅に白い髪を見つけた
光を瞳に溜めつつ窓を拭いている。
モネとジョーラと買い物してきたハイウエストなスーツはカマーバンドをしているかのような形でくるぶしまでの長さだった。すっきりとした足首の先で藤色の5センチヒールを爪先立ちして窓の上の方を拭いている。年上なのに背は小さく、だが、この世界の人は皆デカいのだろうなと幹部たちを思い出した。
「いかがされましたか?」
自分の目線に気づいたのか切り揃えた髪を耳にかけながらきく
左だけかけるのは癖なのだろうか。今日の服装はオフホワイトのホルターネックだ。夜にまたジャケットを着るのだろう
「いえ、なんでも・・お疲れ様」
ベビー5の声に、お疲れ様でございますと一礼される
ふと異界で従者として中間だった彼女ならこの問題をどのように解決するのか気になった
「これから、モネのところに?」
「いえ、まだ時間が少々あります」
ふと時間を確認すると13時20分ごろ。シュガーが借りてることもあるし今日くらい自分が借りてもいいだろうとも何報告もせず自分のことに付き合ってもらうことにした
「食事は取れてるの?」
気づいたら仕事をしている彼女はいつ食事をしているのか。普通に気になった
「まあ、、まあ、取ってますよ。お腹空いたら食べてます」
欲が薄い。なるほどそれも一応というより大きな欲なのか。それにしては薄い
「そう・・一緒にコーヒーでもどう?」
ベビー5の提案に
「誘っていただけるとは、嬉しいです。ぜひご一緒させていただきます」
嬉しそうな顔をしながら言う。
光を溜めた瞳は今も窓からの光を反射し煌めく。ナイルブルーからのターコイズだ。浅瀬色は海を彷彿させる
「そういえば、アレから街には行ったの?」
バケツと雑巾を持ち上げそばに寄ってきた彼女に聞いてみる
「街ですか?ディアマンテ様のコロシアムでしたら」
「そうじゃなくて、街にお出かけは?」
「いえ、まだ行ってません」
本当に1ヶ月ほど仕事しかしてないのか。
仕事人間というよりも、欲の薄さからか不健康にも見えない
「そうなの?」
「特に必要なこともなかったので。ああ、でも、国を知らなすぎるのでいつか外に出ないととは思ってます」
買い物とかではなく、散策。
見た目に釣られるが中身は立派すぎるほどの長寿だ。元々必要なければ出ないのか。そういう種族なのか
バケツを片付けるのを見送って自分は談話室のソファに腰掛ける。持っている書類を見ていると。手を洗ってコーヒーを持ってきた彼女と目が合う。窓の光が薄いここでは瞳は光らない。サックスブルー
「仕事は慣れた?」
砂糖とミルクを用意してくれたので、いつも通り砂糖を二つ、ミルクを半分。彼女は自分の少し斜め前に座るとブラックのまま飲む
「一応。と言っておきます。不慣れも多く、皆さんに手伝ってもらってます」
微笑む顔を見て、そういえばメイド長や執事、シェフ、他の使用人と雑談しているのを見かける。
最近は庭のマーメイドたちにも囲まれてバーでドリンクを作りながら話に相槌しているのを何度か見かけた
「向こうではどのようなことをしてたの?」
カップを置きながらきく
うーんと唸りながらカップを彼女も置き、手を膝に添える。足を組む
「中間というなら、上の立場じゃない?」
私の言葉に
「そうですね。管理というほどではありませんが。上の動きを見て動き。下の動きを見て伝えるといったところでしょうか?」
白い眉毛を八の字にしたり戻したりしながら話す
「教育も?」
「担当ではありませんでしたが、やるべき時は幾度か。新人教育のプログラムは中々使うことがありませんでしたから」
「なぜ?」
「長寿なので」
ふふッと笑う
「長いこと働くものなの?」
「こちらの世界の定義がわかりませんが、100歳で一人前。200歳で次世代。300歳で残す側に400歳で知恵を駆使する。
長く働くというよりも、時間がゆっくりである。が正しいかと。なんとなくここの世界は時間も情勢も目まぐるしく周ります」
「100歳になれば働くの?」
「働く。そうですね。おおよその者が研究や創作に精を出す種族でしたから、それを売る。外の世界を観察する。新しい知識を入れる。不要なら出す。
青系統や赤系統の王族側近色は同じ環境を好みます。同じ環境をいつまでも。1日が何もなく同じサイクルで締まることを皆が望みます」
「つまらなくない?」
「考えたことありません。同じは平穏。子孫繁栄が程遠い位置関係にある我々には違うことを態々するほうが億劫です」
「100歳までは何してるの?」
「勉学です。割り振りは20歳・40歳・60歳・80歳と通う学が違います。主に一般的な文学・数学などの基礎は20歳で応用は40歳です
60・80で応用か自分の求める分野に少し足を踏み入れる。100歳になるとその研究や学びから身体を出します」
「なんだか、スケールが大きい」
「数の違いです」
重く息をつけば、クスリと笑う
「王族側近色は100を迎えれば、王族に所属します。そこからまた学び慣れていきます
私は152歳なので、新しい100歳の相手をすることが多かったということでしょうか?」
「先輩だから?」
「150を切れば次世代の準備を出す。上の200歳が残そうとするものを選び自分の型にする」
「赤や青じゃない人は?」
「その他の分野です。世間的に見れば城以外の仕事の方が溢れてますから。農業、教育、役所、サービス、商人、研究。みな100歳で成りたいものやりたいことに就きます。あとは一緒」
「なるほどねぇ、それぞれに役割があるのね」
お互いにコーヒーを飲む。
「ちなみに、今の環境は?」
気になっていたことをきいてみる
葵い瞳を揺らしながら彼女は少し考える
「それは、使用人たちのですよね?そうだなぁ。もう少し攻めてもよろしいのではないでしょうか?」
「攻める」
コクリと頷きカップを置く
「トップを全く変える。というわけではなく、新部署を立ち上げトップをそちらに移す。そして次世代が動かし、それにつられて下が動く。目指すものを定めるのではなく、示す」
「新部署?」
「ここに来て思ったのは、まとめる係が少ないということです」
「まとめる内容としては?」
「例えばですが、今の大まかな仕事は。ディシャップ・クリーン・コンシェルジュ・キッチンの8つ。
それを担当地区ではなく、細かくする」
「例えば?」
「クリーンならば、室内・屋外でわけてるのをもっと細かくする。
廊下や窓壁など城内のクリーン・各部屋のリネンおよび簡単な清掃・水場・花壇、についてはプールを各週でもよろしいかと
コンシェルジュは午前午後と分けてるのでそれを3個にして朝昼晩。昼に当たる人たちはお休み。朝晩が出勤
ディシャップも同じ内容で。洗い物は洗いの物のキッチンの見習いがする。上はしない。作ることに専念。味の監修はシェフ。創作は次世代の仕事」
「休みを入れる必要は?」
「正しい休み無しの仕事は無駄。休むのも仕事の内です」
「今のあなたにその言葉返すわ」
ベビー5の意見に軽く笑い
「自由の冷たさを感じるうちは休みません。暖かくなれば休みます」
彼女の笑みに笑って返す。返された彼女はコーヒーを一口。
その姿を見ながらベビー5は拍子抜けしていた。
軽く聞いたつもりだったが、割と細かく。深く返ってきた。まだ1ヶ月もないというのに他の人たちの意見を聞きまとめ考えたのか。人脈というか、その行動や考えを深く知りたくなる
「新部署の提案としては、今いるトップを基準に構築。メンバー表があれば伝えます。
馬が合うこと、少し意見が違うが認め合っていること。同じ能力はいりません。それを分配したいので。ベビー5にわかりやすく伝えると、幹部をいっそ上に上げてしまい相談所としての機能とします。みんなの出勤日数の管理、面接。問題の解決相談。そして、その部隊のNo2を幹部にする」
わかりやすい例だ。
「募集は?」
「働く環境は、なにも平穏だけでは成長しない。上を目指す意味を持つこと。向上心を育てるは環境の配置から」
ベビー5が悩んでいた、人数編成。教育環境。募集についてを見事に解決してくれた。
「ベビー5は管理人であって同じことをするのは違います。上は上と示しをつけることが大事かと。これからは私もいますので定期会議を組み各部署の連携を持たせましょう。元々同じ仕事をしていたので意見も飛びやすいでしょうし、次に目安を残しやすい」
スラスラと提案が出てくる。自分の領分ではなく、城が回るための提案。自分の立場は内容の隅でいい。
「助かるわ」
心の底から伝える。言葉で直接頼られるのが何よりも嬉しかったが、雰囲気から頼られるのを感じたのは初めてだった。
頬が熱くなるのを感じる。自分だけを必要としてないが、自分を含めているのが嬉しい。ソワソワするのを感じる
「今日はベビー5なのね」
分厚いメガネをかけたままモネが近づく
「まだ早いからいいわよ」
白い髪を下げそうになる彼女を手のひらを突き出し優しく止める
気づいたら1時間半ほど経っている
「あら、ごめん」
「気にしないで」
ベビー5と自分の空になったカップを持ち洗い場に消える彼女。スラリとした姿勢にいい従者なのがオーラでわかる
「いい提案力ね」
いつから居たのかと目で聞くが、モネの目線はキッチンへの扉のままだ
「頼られるって」
自分の小さな呟きにモネが反応する。今度はベビー5が扉を見たまま
「なにも言葉だけじゃないのよね」
その言葉に何を感じ取ったのか、モネは優しく微笑みメガネを額に乗せる
「あなたの価値を見たのよ」
自分の価値。とうに捨てたと思っていた物を彼女は何気なく見つけ拾い元の高くあるはずの場所に戻していた
角からピンクの羽が見える
庭に行かずにこちらに出向くのは珍しい。モネは驚かずにいる
「お前も価値を見たか」
いつからとため息をつく。2人でいるなら声をかけてくれたらいいのにと顔に出せば、高笑いで返答される
「若様」
カップを戻して帰ってきた彼女。
「いい提案力と思想だ」
キョトンとした顔から嬉しそうな顔。褒められて揺れる瞳は窓の光が当たってコバルト
「光栄です」
「ひとつ結んだ」
「居場所を整える。が仕事です」
「フフフッ・・帰る場所をお互いにか」
「はい」
ふっと笑う
モネと共に若様についていく時、彼女は私に一言告げる
「長話、楽しかったです。また、誘ってください」
と言葉と共に差し出すはベビー5の愛煙している煙草
「一緒に?」
「嫌でなければ」
意外だと見れば、なんてことない顔
こちらを見つめる瞳はピーコックブルー
踵を返して2人についていく後ろ姿は従者として目指す姿勢そのものだった