ワンナイト・エンドレス

*現パロ

きっちり着込んだスーツのネクタイを親指と人差し指で緩める。ついでに第一ボタンもあける
フゥと息を吐きながら、ソファに沈む
やれ会合など、会議など面倒が多くてかなわない。一級品なコース料理を楽しく味わうなんていつまでの話か。
何を食べても同じ味のような気がする。
誰が好き好んで腹が立てたり頭が寂しくなるおっさんとフルコースを食べたいんだ。俺だって若い女がいい。香水がキツくなくて、喜ばせることも喜ばされることもなく、ただただくだらないおしゃべりをしながらテキトーに飯を食うような。いや、もう無理な話か
おれがそう言えば、何処からかバイト募集でもかけた女大生でも連れてくるんだろ。
面倒だからパス。初々しいのがいいかと言われれば無し。そう言ったことに気を遣いたくねえんだよ。だからって、尻軽を持ってこられても面倒だ。下手に手慣れたやつが1番タチ悪い
そういえば、この前ディアマンテが女大生とサシで飲んだと言っていたな。楽しかったとグラディウスに話してて、ピーカに紹介してた気がする。
俺にも紹介しろよ

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「で?ドフィ。それが今日か」
ディアマンテに話しかければ、ソッコーでスマホに軽くLINEをいれてくれた。写真が欲しいなんてほざくからテキトーに撮れよと返した。連絡した後のトーク画面にはいつ撮ったのかわからないソファに白いシャツ羽織ってワイン飲んだる姿。相手からは短く、合格のLINE。何様だ
俺とLINEを軽く交換して、短いラリー。知ってるのは名前と年齢。あと、肉が好きで下戸。美味しいお肉とケーキを所望。てっきりブランド品をねだられると思ったが、あいつらもそういったのは送ったことがないそうだ
駅を指定してきたから、久しぶりに駅に足をつく。車から降りて外の蒸し暑さにイラっとする。人がガヤガヤしててうるさい。電車の発車音がどっか遠くで響く。
「あ、いたいた」
声の方を見れば女大生くらいの女が1人。肩下で外ハネしている髪型に黒のニットTシャツ。ジーパン生地のタイトスカートは膝丈。その塩梅が上手い
「お兄さん、でしょ?ドフィって」
サングラスが一緒。とディアマンテが送った写真を見せてくる。別に見せなくていい
「やっぱり。本物はかっこいいですね。素敵」
お世辞ではなく、ガチの褒め言葉。照れて口を両指先で隠す。
「フフフ・・そりゃ結構だ」
「わぁ、声も素敵」
あたりじゃーんと呟く。あからさますぎて逆に好印象。
「暑いから、とりあえず」
お店に行こうと急かす。おまえ、俺に奢ってもらうんだよな?いや、暗黙の了解だけど
太々しいやつ。嫌いじゃない

仕事のままのスーツをかっこいいと褒める。
「いいところの?」
「フッフッフッ、見てわかるか?」
駅直結の高層ビルにあるレストランは個室。お肉をご所望されたので美味いステーキの店に連れてきた。白い皿に乗る四角い肉を綺麗にカットして食べていく。わりと教養がある
「ブランドモノには興味ないんですよね」
見たところ服もブランドモノというよりは、女大生が買えそうな生地をしてる。
アクセサリーも何もつけず、ネイルもしてない。綺麗に切り揃えられた指。爪の色は桃色。いい血色してる
「でも、その腕時計がすごいことはわかりますよ。ゴツいから」
テキトーに会話を投げてくるのが面白い。おしゃべりなこいつは前菜の時から喋り倒してる。
ステーキとわかった瞬間に赤ワインを飲み物として注文するあたり食にこだわりがあるように見えるが、俺に赤ワインを選ばせたからそこまではない。ブルゴーニュやボルドーはわかる。タンニンという単語も知ってる。意外に重めのが好みらしい
下戸だと言いながら、チビチビと飲む。すぐ顔が赤くなりノースリーブから覗く腕も赤い。弱いにも程がある。ローが見たらきっと、飲ませない
「そういや、俺の仲間とは何処で知り合ったんだ」
赤ワインは飲みが遅いからほぼ減ってない。この後デザートだぞ。飲み終わるのか
「さぁ。覚えないけど、紹介ですかね」
首を傾げると髪が少し垂れる
顎に人差し指をつく姿はぶりっ子なのに、嫌と思えない。身振り手振りの激しいやつ。指先まで赤いじゃねぇか。呑むのやめろ
「私、自分で探さないんですよ。全部紹介。合格ラインは顔の良さ」
人って紹介する時、ぜっったい自分より下のやつは紹介しませんからねえ。ニタリと笑う。確かにな
「ディアマンテさん?はグラディウスさんが教えてくれました。なんでも上司だって。顔は別に好みじゃなかったけど、美味しいお肉知ってるからって。ディアマンテさんからピーカさん教えてもらって。なんでも同僚らしくて。美味しいご飯奢らせるから、デートをしてあげてほしいって。ピーカさん、ドフィさんの部下でしょ?ピーカさん、声が嫌いで話さないらしいですね。でも、めちゃ聞き上手で。私なんでも話しちゃって。でも、それがすっごく楽しいんですよ。ピーカさん、ちゃんと相槌はしてくれるし。あと、映画好きみたいで、今度気になる映画があるっていってたから、気が向いたら誘ってくださいねって言っておきました。そしたら、連絡この前してくれて、今度映画行くんです。映画館で映画見るって久しぶりだなぁ」
よくもまあ、聞いてないことまでサラサラと喋るもんだ。その割に聞いてられるのが謎だ。
そう、こいつに会ってもいいと思ったのが、ピーカだ。なんでも、こいつの言う通り。ディアマンテがピーカのデート相手を用意したと言ってた。ピーカは困った顔してたが、ソワソワしてて。ディアマンテは助言として。そのままでいい。上手い肉を食わせること。もしヤるならデザート後にウィンストンのバニラを一箱差し出すこと。それがあいつとのルールだと言ってそれ以降何も言ってない。結局ピーカはヤらずに帰ってきたそうだが。いい女だったと呟いた。決め手は『聞き上手っぽいから、お喋りな私のくだらない話を永遠に聞いててもらってもいいですか?』だそう。
ピーカの高い声に笑わず、沈黙してからの言葉だそうだ。それはいい女だと思いディアマンテに連絡きてもらったのが始まり。ここまでお喋りとは思ってねぇよ。言っておけよ。
ご所望ふたつ目のケーキを食べて紅茶を飲み干した。甘いのが苦手だから俺のもあげた。嬉しそうに頬張る姿は少女そのもの。残ったワインを飲む。
「やっぱり、いいやつは上手いですよね。おいしー」
顔を真っ赤にしながら喋る。赤ワインを3口呑めば水を4口。いい手順だ。誰に教わったんだか
「やけに詳しい」
3回生のわりにワインについて少しだけ詳しい。お前の年代じゃ、ビールが精一杯だろうに
「私、結婚式場でアルバイトしてて」
ふふと笑う。なるほど合点がいく
「将来、そっちの道に行きたいんです。だから、バイトすごく楽しくて」
地に足がついてるから、こんな事してるのが不自然。礼儀も教養もそこそこあるのに、パパ活とはな
「だから、土日は会えないんですよ。ドフィさん、平日空いててよかったァ。会えて嬉しいです」
ワインで調子が良くなったのか、フフンと笑う女に口角が上がる。俺も酔ったか
「金欲しさかと思ったよ」
素直な言葉に、きょとんとして
「金に困ってないですよー。親もいるし衣食住もあるし、夢もある。愛もありますよー」
少し伸ばして話す。この下戸が。無理すんなって言っただろうが
「じゃあ、なんでこんな事してる」
「楽しいから?」
見た目清楚にして、仕草は育ちの良さが垣間見えるのに、割とクズな発言。おまえ、他に何隠してる
「パパ活って言わないでくださいね。わたし、パパっ子だから。お食事会って思って」
愛があるは確かに。でも、それって、親にバレたら殺されるんじゃねぇのか
「ちゃんとした大人だけに会ってるから。ちゃんとしたいい腕時計をして、それに着せられてない人は危なすぎることはしないかなって。頭いいから、リスク高いことしないでしょ」
一理ある。だから、紹介。うまいこといく
久しぶりの面白い女がもう要らないとワイングラスを遠ざける。熱がこまった充血した眼。睫毛が濡れているように見えるのは角膜に水分が多いから、か?
滅多に買わないソレをテーブルに出す。行きつけのコンビニは36番だった
女はそれをみて、俺を見る。
紅い顔と充血した眼。濡れたように見えるまつ毛がゆったり動く。唇を合わせて軽いリップ音。
「もしかして、ここのホテルだったりします?」
レストラン上のホテルを指差す。図々しいが、期待はずれは許せない。俺のプライドをうまく動かしやがる。予約してないが、取ってやるよ