「おれが笑ってりゃ、なんとかなるだろ!」
欠けた三日月のような形をしたこの島には昔から笑顔がなかった。
満月のように光る金色の瞳は天竜人の大好物で。人間狩りというのを受けてから国がゆっくり崩壊するのをただ眺めているしかなかった。
国王が消えてから数十年が経って、王族が滅んでから数年が経った。残りに残った人間を守るために撃ち抜いていた外界の帆を今日もひと呼吸したタバコを幹に押し付けて狙う。麦わらを被った帆を撃ち抜いた瞬間から私の運命が大きく変わったのかもしれない。
「この国を守るつもりが、ゆっくりと殺していたの」
島の端から端にむけて撃ち抜く予定だった船の船長はジェリーロジャーと同じ麦わらを被った青年だった。
三刀流の彼の横で、私のスナイプを褒めちぎる鼻の長い子も私のセリフに黙ってしまった。
「なんでも、入れられる亜空間は。死んだ家族の死体と弾丸と相棒だけ。なんでも入るのに、入れるものさえなかったの」
便利そうに見えたこの能力も私には持て余してしまって。やりきれない感情が胸を巻いた。
「じゃあ、弔ってやらないと」
船長くんは真っ直ぐ私を見た。
「わかってるけど、手放したくないんだよ。だから、私はここにいる。島を出たら天竜人の餌食になる。行く場所もない、行きたい場所も」
「自分で自分を縛ってりゃ、その先見えねぇだろ」
「人を守るのに私のスナイプがいる。これでずっと守られてきた。私がいなくなったら、国の人はどうやって敵が来たことを知る?」
「あ〜、それなんだけどよ。コレ、街の人たちから預かったんだ」
船長くんはそういうと背中に背負っていた荷物を地面に置いて広がる
「食料?」
「おう!おれ、食わねぇように我慢したんだからな!!」
「いや、そうじゃなくて。これ。どうしたの?国だって食料を分け与えるのに余裕はないはず」
私の焦った言葉に船長くんは笑って
「もういいってさ。お前にずっと守ってもらって悪かった、ありがとってよ
お前、元々外に海に用があったんだろ?それなのに止めてしまって申し訳ないってさ」
ニッシシと笑う彼を見る。船長くんが来てから人はこう笑うんだったなと遠い記憶の兄を思い出した。
「でも、私がいなくなったら」
「だから、俺のナワバリにする」
船長くんは立ち上がって腕を組む。
「俺のナワバリに喧嘩売るんだ。世界政府だろうとなんだろうと許さねえよ」
仲間の国だ。なんてまだ仲間になるなんて一言も言ってないのに笑っていうから呆気に取られる。
「仲間って、」
「仲間だろ!おっまえ、いいやつだし、つえーし」
そりゃ、さっきまで世界政府の船を追い出すのに共闘したけど。君たちの強さは新聞じゃ測りきれなくて。すごかった。そこに、仲間として、入るなんて
「大丈夫だ!お前、ずっと守ってきたんだろ?仲間になったんだ、俺たちにも背負わせてくれ」
太陽のように笑う。ああ、いいな君の笑顔は。
「なんだよ、泣くなよ」
「え、あ、いや、泣っくつもりは、なくて」
ポロポロ流れる涙に肩の荷物が全て消えた気がした。
「お前は、自由だ。お前の好きに生きろよ」
ああ、そうか。結局国をゆっくり殺していると思っていたが、そうではなかった。街に降りれば新しい命が生まれていた。亡くなった人を弔っていた。見えてなかったんだ。なにも。
「弔うのを、手伝って欲しい」
小さな声でお願いすれば、おう!と返ってくる。
死んだ瞬間入れたから、未だに腐らず眠ったような家族。ごめんね、わがままで閉じ込めて
穴を掘って埋めて、線香代わりと吸っていたタバコを添えればコックくんも自分のタバコを添えてくれた。優しい笑みだ。縛っていたのは自分だったのか
「ほら、出航だ!いそげ!」
船に向かう麦わら帽子。それを追う仲間たち。空に向かって銃弾を放つ。
まっすぐにまっすぐに。晴天の雲を撃ち抜いた。
ニッシシと笑い声がする。
「いつか、君のように笑える時が来るだろうか」
ポツリとつぶやいた言葉をルフィが拾う。
「ああ、必ず」
風に煽られた麦わら帽子を手で押さえる。太陽のように笑う
「おれが笑ってりゃ、なんとかなるだろ!」
今じゃない、でも、それでいい。
ルフィの慰めは軽くて、それがよかった。亜空間に相棒を入れる。久しぶりに両手が空く手を振って走る。なんて身体が軽いんだろう。
初めて乗る船は波に揺れてて、変な感じ。冒険の香りに酔いしれながら君の船出の合図を聞く。
私の夜は終わったのだ
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