「迷ったなら、斬り開けばいい」

「また、迷子?」
呆れたような声がナナメ後ろからかかる。チラリと見れば、タバコを吹かしながら歩くクルー。今まで気配がしなかったから、きっとさっきまで空にいた。
「迷ってねぇよ」
「でも、ずっと森だよ?」
んぐっ。言葉が喉に詰まる。いつから見てたんだよ。少し睨むように横目を飛ばせばなんてことないような顔してタバコを吐いてる。
「お酒を望んでいたのでは?」
そうだよ。てか、なんで知ってんだ
「ダメだよ、君は私がいないと」
なんだそりゃ。ぶっきらぼうに呟いてきた道を戻る。戻れば戻るほど見たような見てないような景色が広がってて首を傾げる。
「おーい、そっちじゃないよー」
のんびりと呟きながら俺に近寄る。少し服が重くなったと思えば、コイツの細い指が俺の着流しを摘んでる。
「そっちじゃないってば」
咥えタバコしながら俺の着流しから俺の掌を握る。
「おい」
「森だって言ってるじゃない。私の勘がなければ出られないよ?」
「木だけなら切ればいいじゃねえか」
「ダメだよ、立派な生命体なんだから。自然を壊すのは良くないよ」
ほら、と前に引っ張られていく。ずんずんと進む。迷わないのはきっとコイツが動物系の能力者だから。そうに決まってる。だから俺より道を見つけるのが早い。それだけだ
「全く。君は方向音痴すぎて困るよ」
「困ってねぇ」
「ルフィにさえ、間抜けと言われるんだからね」
「それは、それでどうなんだ」
「ルフィは野生の勘が冴えてるでしょ」
「俺だって見聞くらい使える」
「そういうことじゃないんだけど」
もう。なんてちょっと怒ったように言ってから前を向く。オレの右手を掴む細い指はいつだって空をかける自由の翼になるのに
「お前は空を飛べるんだから、飛んでいけよ」
「君の案内を買ってるんだよ。1人じゃ意味ないでしょ」
「迷ってねえ」
「うんうん、そうだね」
テキトーに返しやがって、俺がほんの少し力を入れれば全ての骨が折れそうなくらい細い。
うちの船では珍しい喫煙者ではあるが、そんなの吸ってはいが悪くならねえのか。クソコックはどうでもいいが、肺に入る煙に耐えれるのか疑問に思う。
「ゾロくんはさ」
彼女の言葉に視線を手先から目の前を行く頭に変わる
「自分の道だけ場間違えないのに。なんでそんなに迷子になるの?」
よくわからない言い回しに首を傾げる。
「ゾロくんは自分の決めたレールというか、そういうのはまっすぐしてて間違わないじゃない?俺ルールというか」
「自分が決めたことをただやるだけだ」
「うーん、その道はパシッと決まってて折れないのになんで見てわかる方向にはいけないのかな」
「んなこと、俺が知るかよ」
「君のことなんだけどね。ゾロくんは自分のやってることとかに矛盾というか迷いとかないの?」
「ねぇな。俺がそうと決めたら腹を括るしかねえ」
「迷うことあったら、どうする?」
「まず、迷わねえ。自分が決めたことなら尚更。腹括るしかねぇ。もし、迷うようなことがあるなら、それを見つめ直す」
「誰しもそんなにすんなり動けるわけじゃないと思うけど」
コイツのセリフを鼻で笑って蹴っ飛ばせばこちらを見てくる。
「迷ったなら、斬り開けばいい。そうやって成長していくもんだ」
俺の言葉に少し呆気に取られて、楽しそうに笑う。
「君らしくていいね」
そうか?よくわからねえけど、お前が何に悩んでるかとか知らねぇけど。楽しそうならいいかと前を向けば、目当ての酒屋
「着いたよ」
タバコをひと吸いしてから話しかける。
「ゾロくんの折れない道があるから安心するんだよね。ここに在るって感じで。
でも、君は方向音痴だから行き先が決まって道がわからなかったら私が空から見て案内してあげる」
よくわからないことを楽しそうに伝えてくる。ほんと、コイツの感覚の話だけは理解が難しい。ため息ついて酒屋に入る。美味そうな酒の匂い。良さそうなのが二つ
「ふたつも買えるの?」
ぎくっ。と身体が止まる。ナミからもらったお小遣いは少ない。
「迷っても斬っちゃダメだよ」
なんて意地悪く笑うから、思わず眉を顰めた。