第7話
蝉が鳴き始めて、長い休みに入る。
約1ヶ月半の間に何回私と遊んでくれるだろうか。その日はデートだからと言われることを簡単に想像できて頭を振るった。
「どうしたの?急に頭振って」
ロッカーに目覚めた?と笑って聞いてくる彼女の顔を見て、ため息をつく。全くこっちの気も知らないで。
「なに、疲れてんの?あー、宿題多いもんね」
そう言うことを言ってるんじゃない。
でも、言う訳にもいかなかったから
「そうだよ」
と返しておいた。
「ねぇ。明日ひま?」
「空いてるよ」
「じゃあ、買い物付き合って」
「いいけど」
「浴衣似合う、髪飾り欲しいんだぁ」
うわぁ。一緒に遊べることに喜んでいたところなのに。一瞬で地獄に落とされた。
まあ、わかってたよ。わかってたけどさ。だって、花火大会明々後日だし。浴衣が届いたの、ラインで写真送ってくれたし。
毎日、ではないけどそれなりにラインしてるし、てか、ラインを毎日するのが愛し合ってるってことじゃないし。イライラするのはきっと、暑いからだ。
「楽しみだね」
精一杯の笑顔で返してあげる。
そうしたら、ほら、
「ふふふ。うん」
みろよ。この顔。きっと、君はそんなに見たことないんじゃないのかな。なんて、勝ち誇ってみる。
髪飾りに反射する祭りの灯り。
この前買ったという新しい浴衣を着てこの日のために結った髪には花の飾りと頸。
「大変だったんじゃない?この髪」
なんとなしにそういうと
「え、ああ。うん。でも、髪の毛三つ編みしてるだけだから」
と笑う彼女。
褒められたことが嬉しくて、ニヤニヤと笑う。照れ隠しが異様に下手くそな彼女のその癖は可愛らしかった。
「花火上がるよ」
そう言って、あの丘の上で花火を見る。
花火を楽しむ横顔は綺麗で、花火に照らされる白い顔と垂れている銀の髪飾りは色とりどりになった。
スッと通った鼻筋にマスカラで伸びたまつ毛。リップが少し落ちた小さな唇。
全てが好きだと再確認する。首筋にあるホクロがいやらしく見えるのはきっと私だけではないと思う。でも、他の人に見せる気は無い。
「みて、ハート!」
形を変える花火をみて興奮する彼女。大人っぽい雰囲気なのに子供のように無邪気にはしゃぐ彼女。可愛い。可愛い。どうしてこうも、愛おしくてしょうがないんだろう。
「花火のさ。ドンって音、好きなんだよね」
「あー、心臓に来る感じ?」
「そそ。ライブとかもそうなんだけどさ」
たわいのない会話をのんびりとする。
私は彼女をふと見ると、彼女は私をみていた。
「なにぃ?」
そうきくと、彼女はなんでもなーいと言って前を向いた。
あ、ニヤニヤしてる。私に見惚れていたことをバレたくない彼女は必死に隠そうとするけど全くの無駄で、
「ねえ」
「ん?」
私の声がけに少し動揺して、応答する。かわいいなと思いながら
「きれいだね」
と返す。彼女もそうだねと必死に返す。
その、きれいだね。が同じような花火にじゃなくて、君のことであることを君は、
「こういうのがいい」
お得意のインスタで検索をかけ画像を私に見せてくる。
いいんじゃない?と笑えば、でもさぁと色々と検索し始める。
楽しそうな彼女をみてお腹いっぱいとはならず、空腹時に似た胃の痛さを、ドンっと音で揺さぶられるような衝撃を心臓に受けた。
ああ、私は今年も浴衣が買えない。
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