奥さんの愛車





ピカピカになって戻ってきたミニクーパーに心が踊った。
2週間前に零くんから少し貸してくれ、と言われたので、特に予定が無かった私は気前良く貸した。しかしミニクーパーは帰ってこなかった。零くんにミニは?と聞いたら色々あってね、とだけ返されてまた昔みたいにカーチェイスでもやったのね、なんて想像したらどう考えても結構派手にやられてしまったんだ、と悲しくなってくる。零くんのばか、って言った日には俺のことは気にしてくれないの、なんて言って。ミニがあああ、って気持ちと零くん待ってその顔だめ、息止まるから!っていう情緒不安定になる。やり場のないこの気持ちのまま帰ってくる今日までの日々を悶々と過ごしていた。

「ただいま」
「っう、おかえりっ」

零くんがミニを乗って帰ってきた。ああ、なんて素敵なフォルムなの、塗装はいつもより綺麗に塗り直してもらえたんだね、ボディは真っ黒ルーフもミラーの裏も真っ白。中から出てきた零くんに思わず抱きついた。

「零くん!またミニちゃんが可愛くなってる!!」
「はいはい、相変わらず愛車精神すごいな」

ははは、と笑っている零くんに同じでしょ?と聞けば勿論、と回答が来てほら、さすが私たち。夫婦だから似てるのよ。車に対しての気持ちも。
駐車場に戻されたミニちゃんを見てまた笑みを零す。零くんの7も勿論いいと思うのだけれど私は断然ミニクーパーが好きだ。ニヤニヤとしていた私に零くんは私の手を引いてお家へと帰った。

「今日は冷やし中華にしたんだよ」
「良いね」

キッチンへと戻りお鍋にお湯を沸かしている間に器を出していると、手を洗い終えた零くんがお茶とお箸の準備をしてくれていた。
麺を茹で終え、盛りつけをして机へと持っていくと零くんの目が爛々としている。お腹すいてたの?と聞くと零くんは私の作ったご飯を目の前にするとお腹が空くな、なんて嬉しい言葉を言ってくれるので、私も零くんの作るご飯とっても美味しくって大好きなの。と答えた。
それじゃあいただきます。
2人で手を合わせてから冷やし中華を啜った。食べながら今日の出来事や帰ってきたミニの話など他愛もない会話をしながら食事を楽しんだ。


後片付けを終えてふぅ、とソファーに座ると零くんも入れ直したお茶を持って隣に座った。ありがとう、とお茶を受け取り冷たい麦茶で喉を潤した。
零くんと夫婦になって2年。帰ってこない日もあるけれど、こうやって2人でゆっくり出来る夜は私にとって信じられない程の幸福感で明日死んでも後悔が無いな、なんて思う。
ムフフ、とニヤついていた私に零くんは顔が緩いな、と言って笑った。


(もう少ししたら税金の季節だな)(待って、恐ろしい単語出さないで)