夫婦でHC





嫌な記憶程頭に残るし、夢にも出てくる。
流れ落ちた自分の涙で目を開けた。
家族の夢、それは私にとってはもう過去の話なのに、どうしてまた夢に出てくるのだろうか。流れた涙を服の袖で拭いて隣を見るとすぅすぅ、と眠っている零くんを見てホッとする。私の家族は降谷零だ。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせとりあえずまだ出てくる涙を拭こうと枕元に置いてあるティッシュを1枚を手に取るとモゾモゾと、隣が動いた後私の体は温かく包まれた。

「よしよし」
「子供じゃないもん、」

そう言いつつも抱き締められて頭を撫でられる私の涙腺は、また崩壊した。夢の話をすればうんうん、と聞いてくれた。
母親に捨てられて、罵られて、愛されて、捨てられて。
辛かった、母親に認めてもらいたかった、母にとって私は1番愛してもらいたかった。そんな母が夢に出てきて私を抱きしめてくれた夢。夢に見るまで私は母を求めているのか。もうこの世にいないというのに、

「名前」
「ぅぐっ、なに」
「鼻水出てる」
「零くんの、そういうとこ大好きい」

零くんの服に顔を擦り付けて鼻水と涙を拭った。
ありがとう、とぎゅっと抱きつくと零くんはどういたしまして、また強い力で抱きしめてくれた。


結局あれから2人で起きて零くんが作った朝ごはんを食べてからホームセンターへ行こうという会話をして準備をし戻ってきたばかりのミニクーパーへと乗り込んだ。
零くんがお休みの日は運転を譲ってはくれない。久しぶりに聞くこのエンジン音に自分の大好きな曲、朝のあの暗い気持ちから一転、気分が上がっていた。

「ホームセンターってなんだか久しぶりに行くよね」
「そうだな」
「余分な物まで買っちゃいそう」
「そうなったら、静かに戻しておくよ」

他愛もない会話を楽しみながら、しばらく走って見えてきた看板に何買おうかなあ、いいのあるかなあ、なんて思いを馳せていた。
零くんとのお出かけというだけで私の心は尋常じゃない程ウッキウキになるのだけれど。
零くんはマグ買い直そうか、とかカーテンも変えよう、とか心做しかルンルンで話してくれてる。大好きな車の中で大好きな零くんと過ごせるというのはやっぱり幸せすぎて頬が筋肉痛になりそうなほどニヤニヤが止まらない。駐車して、零くんと手を繋いでカートを押してホームセンターの中へと踏み込んだ。





「間違いなくこれは買いすぎちゃった」
「楽しかったもんな、仕方ない」
「よく考えたら、2人しか居ないのにマグカップ4つも必要だったかな...」
「名前が割る可能性を考えれば必要な数だろう」
「... ...割らないもん」

トランクに大きな袋三つを突っ込む零くんに思わず零れた言葉。テンション上がって、結局お昼のチャイムが鳴るまで買い物をしていた。
ホワイトとブラックのペアマグに、グレーとホワイトのストライプ柄のマグ二つ。お皿を三枚、それにカーテンと遮光カーテン、もう袋開けなきゃ分からないほどに買い物をしてしまった。零くんもこれいいな、といってカゴにポンポン入れていたのでそれも相まって多くなったのである。商品を戻すなんて言ってたくせに。帰って整理するのめんどくさいな......。なんて苦笑いをしてまた行きと同じ助手席へと乗り込んだ。

「お昼食べて帰ろうか」
「じゃあ、食べて帰ってから早速今日買ったペアマグに珈琲入れてね」
「夜はストライプの方で紅茶を飲もう」
「大賛成です」

そして今日も幸福感で緩んだ頬のまま、1日を終えるのだ。




(これなんだ?)(こすりん棒は消しゴムで消す感覚でコゲが取れるんだよ)(またテレビ情報だな)