05
そして午後の授業、4限目・・・
10月の体育祭についてのオリエンテーションだったため、大講堂に全学年が会するのだけれど・・・
あまりに人数が多すぎて、クラスごとの集まりではなく席も自由。
そのため講堂内は混雑していた。
私はこの人ごみに辟易して、できるだけ隅の方で出口に近い方がいいな・・・と思っていた。
いつのまにか、硝子とも離れてしまっていてもう探せないだろう。
「ここが空いているが」
「え・・・あ、有難うございます」
人ごみの中でもピンと張った声。
目を瞑り、表情の分からないその人・・・は私に声をかけたようだ。
咄嗟にお礼を言い、その人の隣に座ってしまった。
たぶん・・・3年生かな?高校生とは思えないような、雰囲気だから・・・
「見かけない顔だね、君、外部からの編入生?」
反対側からも声をかけられた。
振り向くと、深い藍色の髪の、穏やかにほほ笑む男の人。
その人は息をのむほどに、きれいな容姿をしていた。
思わず、緊張が走る。
「あ・・・はい、」
「ああ・・ごめん、俺は3−Eの幸村というんだ」
「あ、えと、2年の、三島・・・です。」
「三島さん、よろしくね。
高等部だけでもすごい人数だろう?これだけ人数がいたら、体育祭も4月から準備しないと間に合わないんだ」
とても優しく、穏やかな声だ。
緊張したけど、どうやら話しやすい雰囲気の人みたい。
「そう・・・ですね」
「体育祭のプログラムも沢山あるんだ、ほら、見て」
予め席に置いてあるプログラム案を開いて見せてくれる幸村先輩。
ほんとうだ。
およそ高校の体育祭とは思えないボリューム。
学年対抗リレーや部活対抗リレー、騎馬戦もあるし、女子のダンスや男子の演武のような種目も数種類。プログラム上では内容が推測できないような競技名もあり、
ユーモアも織り交ぜた楽し気な体育祭を予感させた。
「演技の種目は、色々選べるんだよ。三島さんは・・・これなんかいいんじゃないかな?」
「ち、チアダンス、ですか」
「うん、小柄だし、細身で運動神経良さそうだから」
なぜだか、今、幸村先輩の視線に違和感を覚えた。
さっきは穏やかだったのに、今は・・すべてを見透かすような瞳だ。
「・・や、チアなんて難しそうなの無理です、私は・・・大道具とかの準備班がいいなって」
「そう?面白いね、女の子で準備班がいいなんて言う子いないよ」
くすくすと笑われてしまった。
あ、さっきの優しい目に戻った。
その後も、幸村先輩は、オリエンテーションの最中にもこの学校のいろいろなことを教えてくれた。
初対面だけど不思議と話すことが苦にならず、最後の方は幸村先輩に合わせて少し笑えるようになっていた。
「―――――以上で、体育祭オリエンテーションを終わります・・・・・今後は、各クラスで実行委員を選出の上、準備を進めてまいりますので――」
「・・・・あれ、もう終わってしまったんだね」
「そのようですね・・・幸村先輩、ご丁寧に教えていただきありがとうございましたっ」
「いいえ。俺でよければ、なんでも聞いてよ―――」
「幸村、次は視聴覚室だぞ」
「ああ、柳。そうだったな。部長会があった」
ヤナギ・・・私にはじめに声をかけてくれた人が幸村先輩の肩をたたいて知らせた。
「今から、また違う集まりですか?」
「ああ、各部の代表が集まる・・・部長会があるんだ」
「幸村先輩は部長なんですね、」
「うん。 俺はテニス部の部長なんだ」
・ ・ ・ ・ ・。
「あ、ちなみに彼は柳といって、同じくテニス部のレギュラーなんだ」
「柳 蓮二だ。・・・・・三島凪子。なかなか面白いデータがとれたよ」
「じゃあ、ね。三島さん。また」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。
にっこりと笑う幸村先輩と、1ミリも表情の変わらない柳先輩が去っていく。
私はまるで動けなくなり、立ち尽くしていた。
ボスでした。
ラスボスです。
めちゃくちゃやばいじゃん
切原赤也、私にどうしても報復する気だ――――
ひ・・・・卑怯者――――!!!
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