蘭(7)と竜胆(6)に朝からホットケーキ焼かされる話
小学生の兄弟の世話を押し付けられた私は、朝から注文の多い兄弟の朝ごはんを作らされている。
朝ごはんにホットケーキ食べたい。という、弟のオーダーにしたがい、朝7時前からキッチンに立つ私。
「すげーよ、にーちゃん! ナマエ、チンしないホットケーキ焼けるんだぜ」
さっきまで私の周りに纏わりついて、油が跳ねたら熱いんだよ!! と注意されていた弟の方がパタパタと足音を立てて走り去って行った。
目覚まし時計が鳴っても起きない、体を揺すっても起きない兄の方を、このまま起こして連れてきてくれないかなと願ったが、素直に弟に起こされてくれる兄ではないようだ。
兄弟の部屋の方から響いた子供の泣き声。
また喧嘩したか。と、ため息を吐きつつキレイに焼き色のついたホットケーキを皿に乗せた。
ホットケーキが乗った皿を二つ、ダイニングテーブルの上に置いて鳴き声の聞こえる部屋へと向かう。
ベッドの上で布団を被って丸くなる小さな体と、その脇で大粒の涙を零してしゃくり上げるもっと小さな体がそこにあった。
「にーちゃが、ぶったー!」
私を見つけてベッドから飛び降りてきた弟は、ドンっと私の腹に体当たりをしてくる。
地味に痛いのを我慢して、ボロボロ泣いている弟の頭を撫でてやると後頭部にだいぶ立派なたんこぶを発見した。
「蘭ちゃーん、竜ちゃんぶっちゃだめっていつも言ってるでしょ? おっきいたんこぶできちゃったよ」
布団を被ったまんまるへと声をかけると、布団からちょこっとだけ顔を覗かせた兄。
「だって竜胆がうるせーんだもん」
女の子みたいな顔した兄は、寝癖でぐしゃっとした頭をかきむしりながら、ベッドの上に上体を起こした。
「竜ちゃんは蘭ちゃんの事起こしに来てくれたんだよ。起きよう?」
ぐずぐずとしゃくり上げる弟の小さな手を取り、ベッドへと近づく私の指をぎゅっと握ってとことこ弟はついてくる。
「なんで起きなきゃなんないんだよぉ」
兄は目を擦りながら甘えた口ぶりで言う。
なんで? と、言われても君はこれから小学校に登校しないとならないんだって。
「蘭ちゃん起きてこないなら、朝ごはんのホットケーキ、私と竜ちゃんで食べちゃうよ。ちゃんと起きてきた子のホットケーキにはアイスものせちゃおうかなー」
「オレ、アイスのせるー!!」
ぐずぐず泣いていた弟が、一瞬で泣き止んで私の指を離す。
パタパタと足音を立てて、部屋を出て行く弟。
「竜胆待てよ。俺もアイス! ナマエ早く来いよ!」
朝に弱いがアイスにはもっと弱い兄も、ベッドから飛び降りてパタパタと足音を立てて走り出す。
「お家の中走ったら危ないよー!」
ヤンチャな兄弟に声をかけようも、彼らが私の言うことなんて聞いちゃくれない。
リビングへと戻ると、ダイニングに仲良く並んで座る兄弟の後ろ姿が見えた。
彼らの横を通り過ぎ、キッチンへと急ぐ。
冷凍庫からレディーボーゲンの大きな容器を取り出して抱えて、大きなスプーンを持って彼らの元へ。
スプーンでアイスを掬って、パンケーキに乗せてあげると、湧き上がる歓声。
兄が弟の分もメープルシロップをかけてあげている姿が微笑ましい。
喧嘩ばかりするけど仲良しな兄弟の朝ごはんを眺めながら、私は彼らランドセルに灰谷の印鑑を押した連絡帳を突っ込んだ。