蘭(7)と竜胆(6)のお着替えを用意する話
小学生の兄弟の世話を押し付けられた私は、バスタオルを2つと、小さな着替えを2人分準備して洗面所の洗濯機の上に置いた。
ここなら小さい弟も自分で手が届くからグズらずに済むだろう。
「蘭ちゃーん、竜ちゃーん、パジャマとタオル置いたよ。ちゃんとあったまってから出てきてね」
ドアの向こうで2人でお風呂に入っている兄弟に、声をかける。
「ナマエ!? オレ、もうでる!」
すると、勢いよくドアが開いて、小さな体が飛び出してきた。
ドアの向こうではシャワーが出しっぱなしのため、湯がはねて洗面所の床に飛沫が飛んでくる。
飛び出してきたのは弟の方で、出てきたずぶ濡れの体をなんとか受け止めたのだが、バスルームから溢れてくる湯気とは反対に飛び出してきた体は冷たい。
そのうえ髪の毛にはまだベッタリとしたものがへばりついている。
これはまだリンスを流してないな。
バスルームの中を除くと、男の子にしては長すぎる髪の毛を暖かいシャワーで濯いでいる後ろ姿が見えた。
「蘭ちゃん、竜ちゃんの頭も流してあげて」
肩甲骨が天使の羽の様に浮く小さな背中へと呼びかけると、天使の様な美人が振り向く。
「やだよ。ナマエがやれ」
天使には似つかわしくない台詞がピシャリと放たれた。
「私も濡れちゃうじゃん」
「ナマエも一緒に入ろうよ!」
ずぶ濡れの体の弟にタックルされて、腰に腕を回されてしまう。
地味に痛いし、スカート濡れちゃうからやめてほしい。
「ばか、竜胆。オンナと風呂なんか入れるか」
流していた髪をかきげると、シャワーを止めてバスタブへと浸かる兄。
「蘭ちゃん、ばかは言っちゃだめ」
「小学生にもなって竜胆はまだナマエと風呂入んのか〜?」
私の小言は無視して、バスタブの縁に頬杖をついてニタリと笑いながら弟を煽る兄。
小学生になったばかりの弟は、私の腰にしがみついたままこちらを見上げてくる。
「竜ちゃん一年生になったら蘭ちゃんと2人で入るって、オニーサンでスゴイな♡って思ってたんだけどなぁ♡」
オニーサン。スゴイ。と、彼の好きな言葉を並べてみた。語尾にハートマークもつけて大サービス。
すると、弟は私の腰に回した腕をゆっくりと解いて。
「オレ、もう一年生だから、ナマエと風呂入ってやんねー!」
ニシシっと歯を見せて笑った弟は、私を放してバスルームへ駆け込んでゆく。
「お風呂で走ったら危ないよ!」
声をかけるが、バシっと勢いよくドアを閉められた。
「竜胆。ほら、あたま、流してやる」
ザバァって大きな水音がして、優しいオニーサンの声が響いた。
あー。もう、床も私の足元もスカートもびちゃびちゃだ。
濡れたスカートを脱いで、洗濯カゴに放り込むと、私は床の掃除を始めた。
バスルームからは楽しそうな兄弟の声が響いてる。
さっさと床を掃除して下半身に服を身につけないと、オンナがパンツでふらふらするな! と、小さなオニーサンに小言を言われてしまいそうだ。
私は手早く濡れた床を掃除して、着替えをしに急いだ。