白くま語

「name!珍しいね、nameがこの時間の船番なの!」


今は昼の2時。今日は正午から夕方の6時までの船番だ。

甲板でマストの柱に背を預けて座っていたらのそのそと大きな白クマが陽気に近づいてきた


「今日はもともと入る予定だった人が体調を崩し、代行です。」


基本的に、私はこの後の時間、夕方の6時から深夜12時まで入ることが多い。

そのあとライラックに出勤するのにちょうどよいからだ。


「そうなんだ〜nameもたまにはちゃんと太陽浴びたほうがいいよ!じゃないと枯れちゃうから!」

「ふふ、私枯れちゃうの?」


たまにベポはこういう不思議なことを言う。わかるようでわからない、かわいらしい言葉。

心の中でそれを白クマ語と呼んでいるのは秘密だ。


「うん、太陽浴びると笑顔になれるんだよ、不思議だよね!」

「笑顔に?」

「そうーー!だからね、今日みたいに天気がいい日は僕絶対甲板に出てね、白い雲と青い空ときらきら光る海を見るの!

海ってね、青いけど青だけじゃないの、いろーんな色できらきら光ってるの!だから僕、それをずーっと見てるんだ!」

「…いろんな色ですか。海は青いと思っていました。」

「そんなことないよー!ほら、きてきて!」


ベポは立ち上がって私の手を引っ張って甲板の端まで連れていって海を見せる。

一応私は船番としてここにいるので、こんな海のほうを見ていては職務怠慢もいいところなのだが。


「ほら、きらきらしていろんな色が見えない??」

「確かに、太陽が水面に反射して様々な色が見えますが…」


きっと、ベポが言いたいのはそういういろんな色じゃないのだろう。


「もっとほら、心を開いて!心で見るの!」

「心…」


白クマ語はやはり私に難しいことを要求してくる。

反応の鈍い私に、水面に光る色についてどうにか伝えようと一生懸命話すベポがとりあえずかわいい。



「昔ね、すごくきれいな花畑なら見たことありますよ。」

「へー!そうなんだ!どんな花畑??」

「うーん、小さいころの記憶なのであまりはっきりしていませんが…。森の中だったような、小高い丘だったような…。

ただとても鮮やかな色をしてるなって。」

「そっかー、きっとすごくきれいだったんだろうね!」


ベポはそういって私に無邪気に笑いかけた。


「はい…できることならいつかまた、見たいかな。」

「見れるよ!絶対!」

「そうですね。」





白くま語は難しいが、温かい昼の陽気とよく合っていると思った。


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