生まれ変わったら
人はどこで生まれて、どこに向かうんだろう

人と動物の違いは何だろう

思考と何だろう

感情とは何だろう

人を人たらしめるものは何だろう

私を私と定義するものは何だろう


今日はやけに心が動く日だ、とまるで他人のように思った。

私はライラック…夜の店でもう見慣れた船長さんを隣にただひたすらお酒を飲んでいた。



「今日はやけに飲みペースがはえぇじゃねぇか、name」

「そうかな…。ごめん」

「別に謝ることじゃねぇ」

「え、あぁ、そうだね、ごめん」


ぼーっとしていた私は再び謝っていることに、自分の声で気づいた。

はっとして船長さんの顔を見れば眉間にしわを寄せてこちらを見ていた。


沈黙が二人の間に流れて、船長さんに無言で言葉を促されているのを感じる。


「来世でも君と結ばれたいとか、よく恋人っていうじゃないですか。でもたとえもし魂という概念があるとして、その来世の私って私といえるのかと思ったんです。」

「言われたのか?」


言葉はないけど、それはジャックのことを指している。


「はい。その考え方がとても不思議に思えて。来世の私ってやっぱり私ではないと思うんですよ。

でもじゃぁ今の私っていったい何なのだろうかと思いまして。一体私の何が残ってればそれは私になるんでしょう。

肉体ではないと思うんです。肉体だと一卵性双生児の双子は同一人物ということになりますから。

でも魂というのも私はピンと来なくて。魂とは一体何なんでしょう。それについて考えていたんです。」


ここまで一度に話せば船長さんはどこか愉快そうな顔でこちらを見ていた。


「で?その魂について答えは出たのか?」

「いえ、出てないからずっと考えていたんです。感情、価値観、思考、どれも含まれるとは思うのですがこれという何かが見つからなくて。

…船長さんはどう思いますか?」

「魂か。そうだな…。」


つぶやくように言って船長さんは顎に手を当てて前かがみになった。

どこか宙を見ているようでそれでいて一点を貫いている、そんな視線をを私は横からじっとみつめる。

再び二人の間に沈黙が訪れたあと、船長さんはおもむろに口を開いた。


「エネルギーの核みたいなもんだな…」

「核?」

「感情なり、価値観なりを決めるもんだろう。人が生まれながらにして持ってる使命…。自分は何処にいきてぇのか、行くべきと思っているのか。」

「…」

「本能みたいなもんだ。

人として自分はどうありたいのか、何をしたいのか。頭の一番奥で自分を突き動かすもんだ。」


私は船長さんがいった言葉を消化しきれずに頭の中で反響させる。

“人として自分はどうありたいか、何をしたいのか”

何もわからないがただ一つだけわかった、私はそれを持ってない。


「んー、なんとなくわかったかも。魂は振動の一番源って感じなんですね。」

「クク…まぁ、こんなもん人それぞれだがな。お前はお前の考えを持てばいい、それも…」

「それもまた…でしょう?」

「ククク…」



命題がひと段落して私たちは空気をほぐしながらお酒に口を付ける。

張りつめていた意図がふっと緩んだところでいつも頭にあった疑問が浮かび上がる。


「そうか…色はこれなのかもしれない…」

「色?」

「そう、花畑の色…」



小さいころにいつか見た、花畑で私は強く何かを思った気がする。

私はそこでわんわん泣いて、花は痛いくらいに鮮やかで、今でも頭の裏にこびりついてる。

なのに、今はどんな花畑を見てもどれもくすんでいて、私はただそれがとても嫌で。



「なんでかなぁ…」


なんでこんなに何も見えなくなっちゃったんだろう。

船長さんは何も言わずにただ私を見ていた。

その視線の意味は分からなかったが、ただ私は自分のことで精いっぱいだった。







その日寝るときにふと、そういえば、あんなふうに何かで頭がいっぱいになることも久しぶりだったなぁと思いながら眠りについた。






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