都築圭


夜も更けてきたが、今日は大晦日ということもあり神社は人で賑わっている。この神社には315プロのアイドルたちと訪れるのが毎年恒例になっており、今年は先程まで生放送の特番に出演していたAltessimoの2人と来ていた。
「圭さん、大丈夫ですか?」
「プロデューサーさんが手を引いてくれてるから大丈夫だよ」
「絶対に離さないでくださいね。この人混みだと迷子になったら見つけるの大変ですよ」
少し前までは迷子防止のために麗くんが彼の手を引いていてくれたのだが、豚汁が飲みたいなぁなんていう圭さんの一言を聞き、貰いに行ってくるからと圭さんの右手を託されたのだった。圭さんが水以外を口にしたいというのも珍しいので食べてくれるうちにと。その為人通りが比較的少ない境内の脇に移動したあと、私は圭さんと一休みをしていた。
「1年あっという間でしたね」
圭さんは目尻を下げてふわりと微笑んでから思い返すかのように目をゆっくり閉じた。
「そうだね。今年も素敵な音にたくさん出逢えたよ」
麗さんやプロデューサーさんのおかげだねと言われて私の胸の内もぽかぽかする。すると緩く繋がれていた圭さんの手に少し力が加わり、私はどうしたのかとそちらを見た。
「来年は君の音がもっと聴けるといいな」
麗くんがこちらに向かってくる様子をぼんやりと見つめていた圭さんの口から無意識にこぼれ落ちたであろう言葉に私は何も返すことができず、そのまま境内の雑踏の中に紛れていった。