25日、待ち合わせの時間は午後なのでゆっくり出来るはずだが、名前は朝早くから部屋でバタバタと動いていた。
「ちょっと名前、朝から何暴れてるの?」
「あ!お母さん、これとこれの組み合わせって変じゃない?!」
物音に気付いた母が部屋を覗き込むと、ベッドの上にこれでもかと並べられた服に目を見開いた。
「変じゃないけど……何、デートでもするの?」
「えっ?!デ、デートって訳じゃないけど…。」
「ふーん……。」
慌てて否定するものの、頬が赤くなっている姿を怪しむ目で見ると、ちょっと来なさい、とリビングへ名前を呼ぶ。
「はい、メリークリスマス。」
「ありがとう!開けて良い?」
母に渡された包みを開けると、箱から出てきたのはムートンのあしらわれたブラウンのお洒落なショートブーツ。
「さっき選んでた服に丁度良いでしょ?」
「うん!お母さんありがとう!」
喜ぶ娘に気を良くした母は、一緒になって長い時間、あれやこれやとオシャレするのを手伝い、化粧品も貸して、ご機嫌な名前を笑顔で見送った。
「ん?名前は出掛けたのか?昨日も友達とパーティーだったんだろ?」
「あなたはまだ知らない方が良いかもね。」
ドアの閉まる音に気付いた父に、母は悪戯っぽい笑顔でそう言った。
駅前の広場にある、大きくはない時計付きのオブジェの前に、快斗は立っていた。
(寒っ!長期戦覚悟の割には薄着すぎたかな…)
吹き付ける冷たい風に、両手をポケットに突っ込むと、後ろの時計を振り返る。
(2時50分、あと10分で勝負開始か……)
「…黒羽くん。」
「えっ!?」
後ろから掛けられた声に快斗が驚いて振り返ると、普段の制服姿とは一味違う名前が立っている。
「名前ちゃん!来てくれたんだ!しかもまだ時間前なのに。」
「だって黒羽くん、私が来るまでずっと待ってくれるって言ってたから……“来ないかも知れない”とは思って欲しくなくて…。」
普段女子の中ではサバサバしているイメージの名前が、オシャレして恥ずかしそうに言う様子に、快斗は一瞬息を詰まらせる。
「っサンキュー!俺めちゃくちゃ嬉しいんだけど!えっと、取りあえず連れて行きたい所はあるんだけど、そこは暗くなってからだから、それまで映画でも見るか?」
「うん!」
すぐ近くにある映画館を指さした快斗に笑顔で頷くと、並んで歩き出す。
僅かに空いた距離も、普段並ぶ事さえない2人にとっては充分近い距離で、お互い早くなる鼓動を抑えるのに必死だった。