クリスマスから2日後。アズミは魔法薬学について教授のところへ質問に行った帰り、廊下でリドルを見かけた。

(あれ?いつもこの時間はまだ図書室に籠っているはずなのに)

不思議に思い、その姿を追う。後ろからちらりと見えた瞳は、真っ赤に染まっていた。その瞬間、ぞくりと背筋に悪寒が走る。途端にアズミの足は止まってしまった。

ああ、今の彼は、映画で見慣れたあのリドルの顔をしている。

(どうする?今ここを追うのは良い判断とは思えない。…でもこのまま問題を無視してたら、リドルとの関係はきっと変わらない!)

自分の両頬を強めに叩く。そして一歩、踏み出した。ここがきっとターニングポイントになるだろう。引くわけにはいかない。止まってしまった自身の足に鞭を打って足音を消して歩き、リドルとの距離を少しずつ詰めていった。

それから1,2分ほど後をつけて曲がり角を曲がったところで目の前にあったリドルの姿が消えた。

「えっ!」

アズミは驚いて四方を見回すが、どこにも姿は見当たらない。隠し部屋にでも入ったのかと壁に手をあてて伝いながら進んでいると、体がぐいっと引っ張られた。

「うわっ!」

妙に体が浮くような感覚に襲われる。その勢いのまま、アズミは受身も取れずに床へ倒れ込んだ。

「う、いたた…」

「やあ、アズミ」

そこは薄暗い部屋の中。目はまだ暗さに慣れず、何も見えない。

近くからリドルの声が聞こえた。それはいつもの優しさを纏ったテノールボイスではなく、冷たい突き放すような声で。

「僕の後をつけたりして、一体どうしたんだい?」

とん、と左耳の近くで音がする。間違いなくリドルが顔すれすれのところに手を置いた音だろう。だんだんと目が慣れてきて、目の前には無表情な顔が見えた。赤色の瞳は射抜くようにアズミを見つめて動かない。

「ねえ、答えてアズミ」

つう、と背中を汗が伝う。アズミ・エノモト、編入以来最大の危機だった。バレないように、ごくりと唾をのむ。そしていつも通りの笑顔を浮かべた。

「はじめまして、やっと会えたねトム・マールヴォロ・リドル」

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