「…半日か。まぁこの辺りがボーダーラインかな。」
アズミは置き時計を横目に見て、ベットから起き上がった。ネックレスの力を実験していたのだ。
実験を始めて数日、力の全貌が少しずつ掴めつつあった。
まず第一に、1日1回しか使えない。どんな小さな願い事であろうと1つだけだ。
次に、他人を変えるような願い事は叶わない。たとえ自分を闇の帝王にしろ、という願いだろうと代償さえ支払えば叶えられるだろうが、他人は寄り道させることすらできないのだ。
最後に、願い事によってその後の苦痛が変わる。時間制限などを決めない願い事は大体の場合激しい頭痛と全身の痺れ、呼吸困難に願い事の大きさにあった期間だけ意識不明の昏睡状態になるといった大きな代償を伴う。
それに比べて1日限定、数時間限定の願い事は数秒間の頭痛で済んだ。
ちなみにさっき頼んだのは『定規なしで等間隔に薬草を切れるようになる』という願いだ。これは期間を無制限にしたので昏睡状態を伴った。ただしこの間の記憶力向上ほど大きな望みでもなかったため、半日の気絶で済んだようだ。日常的に使える願い事は、この範囲ではないだろうか。
「…あーあ、これは流石にリドルに怪しまれてるかな?」
アズミは一度起き上がったベットにまた倒れ込んだ。意識不明になっている時は食事もなしで大丈夫なので全くお腹は空いていないが朝食後から夕食の時間直前の今までずっとぶっ倒れていたのだ。ここ最近はリドルと3食共にすることが多かったため、昼に顔を見せなかったことで何か勘ぐってくる可能性がある。体自体はついさっき朝食を食べたと錯覚しているためきついが、夕食を食べるふりをしに行かねばなるまい。
「あーだるいなー、面倒くさい」
アズミはだらだらとまたベットから起き上がり、ネクタイを結びなおす。そうして鏡の前で髪を軽く整えてから、ゆったりと大広間へ向かった。
案の定リドルから遠まわしに詮索を受けたのだが、アズミはそれをヘラヘラと受け流しては笑うのである。