買い物を終えてホグワーツに着いたころには、太陽は西に傾き始めていた。付き合ってくれたお礼を言ってから自室に戻ろうとしたアズミは、後ろからリドルに声をかけられて思わず固まる。

「今日の6時に大広間で君の寮の組み分けを行うそうだけど、寮の説明については校長先生にされているかい?」

「あ、うん」

特に説明は受けていなかったが原作である程度知っているため、説明されたことにしておく。その返答を聞いて、リドルは己の首に綺麗に締められている緑のネクタイを指で優しく撫でた。

「僕はスリザリンだ。君のような素敵な女性が我が寮に来てくれることを、僕は心より願っているよ」

そう言うと、リドルは軽く手を振ってどこかへ行ってしまった。アズミはリドルを見失うまでその後ろ姿をぼんやりと眺めた後、急ぎ足で自室への帰路に着いた。思い返すだけで寒気がしたのだ。

別れ際に見せたリドルの笑顔は、この数時間のうちで最も素顔に近いような、得物を狙うような笑みだった。

***

「あー、もう!どうしてこんなことになったの!」

アズミは部屋に戻ってベットに飛び込んで、朝からずっと思っていたことをようやく吐き出した。

そりゃあ確かに、もしかしたらまだリドルが在学中の頃かもしれないとは思っていた。けれど、同学年で、しかも自分の世話係になるなんて露にも思わなかったのだ。こんな偶然があってたまるか!と叫びたかった。

それから手触りのいい枕に顔をうずめ、今後のことについて考えることにした。とにかく必死に原作の流れを思い出す。

(5年生の11月なら、まだマートルも父親も殺してなかったよね?それならもしかして…)

「物語を、変えられる?」

リドルを完全にヴォルデモートにしなければ、つまり分霊箱を作ったり実際に人を殺したりしないうちに彼を改心させれば、あの悲劇は起こらなくなるはずだ。そして、自分はそれを可能にすることができるかもしれない。

思い浮かぶのは、映画で観た多くの悲しみや苦しみに囚われた顔。それらを自分の手でが変えることができるのなら。

アズミはベットから跳ね起き、両手で自分の頬を叩いた。真っ赤になっているだろう両頬をぐっと手で押さえ覚悟を決める。

「見つけた。私にしかできないこと」

すぐさま部屋にある本の山から『基本呪文集(1学年用)』を探し出して、狂ったように読み始めた。

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