「ほう。どこに行きたいんだ?」

「スリザリンだよ」

アズミは組分け帽子に自身の要望を告げた。そうすれば、帽子は頷くように少し身じろぎをする。

「ほう、何故君はスリザリンに?」

「私は、この学校の中で必ずやり遂げたいことがあるの。そのためには、きっとスリザリンに入った方が得だから」

そうアズミが言うと、組分け帽子は大きな声で笑った。

「そうかそうか、随分と正直だな。それに目的のために手段を選ばず私に頼むところはスリザリンにぴったりだ。よし。

スリザリン!


組分け帽子がそう高らかに叫んだ瞬間、大広間は大歓声に包まれた。スリザリンからは喜びの、その他の寮からは落胆の声が響く。アズミはひょこっと帽子を取って、台から降りる。

「ようこそスリザリンへ。アズミ」

どこに座ろうか、と空席を探しているとリドルに声をかけられた。それは、午前中に見たものと同じ笑顔。それでもどこか雰囲気が違って見える。リドルが自身の隣の席を指して、そこに座るように促してきた。勿論アズミはそれに応じる。

「ありがとう。改めてよろしくね、リドル」

互いに、胸の内に秘めた目的を晒すことなく笑い合う。そんなリドルとアズミの顔に貼り付いているのは、まるで鏡合わせのようによく似た、作り物の笑顔だった。

***

組分けが終わった後のスリザリンのテーブルは、静かながらも確かにアズミが来たことを歓迎し、暖かく迎え入れてくれた。原作では意地悪で陰鬱なイメージを与えがちなスリザリンだが、実際は内輪意識が強いだけで他の寮と変わらない絆を持っていたようである。まあ元々スリザリンが大好きだったので原作通りの陰湿な寮でも全然構わなかったわけだが。

そして現在、アズミはスリザリンの同学年である女子生徒に案内されて自室に来ていた。人数の関係上部屋は1人部屋になってしまった。

そのことを女子生徒は心配そうにしていたが、のちのち目的のために夜中に行動することもあるだろうから、こっちの方が好都合である。

(もしかして、ダンブルドアの粋な計らいなのかな?)

アズミは既に運び込まれた制服や本の山を横目に見た後、ベッドに腰掛けた。そしてシャツの中にしまっていた真ん中に真っ赤な石がついた十字架のネックレスを取り出して明かりに透かしてみる。あまり派手な装飾のされていないシンプルなそれを、アズミは気に入っていた。

赤い石は光の角度によって、内部に星がきらめいてるような輝きを放つ。それは最初に目が覚ました時に身につけていたものだった。身に覚えのないはずのネックレスは、何故か見るだけで安心感を与えてくれた。

「ふう…」

アズミは1つため息をした後、ネックレスをまたシャツの中にしまった。現実逃避をしている時間はないのだ。そう思って、山積みにして置いてある本の中から読みかけの教科書を引っ張り出して読み始めた。少しでも多くの知識を身につけ、世界を救うために。

さあ、ホグワーツでの学校生活が始まる。

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