組分け帽子をアズミが被ってから、随分と時間がたった。どの寮の生徒も、彼女をぜひ我が寮にと組分け帽子の声を待ちわびている。
リドルは、話しかけてくる周りの席に座る同寮の生徒たちをうまくあしらいながら、壇上の椅子に腰掛けている少女を見つめた。
***
校長のディペットから「頼み事がある」とリドルに呼び出しがかかったのは、昨日の夕食後だった。
消灯時間後に秘密の部屋を探しに行くために、宿題になっていた魔法薬学のレポートを早く終わらせたかったが、校長直々の呼び出しを無下にはできない。優等生でいるのは大変だ、と周りにバレないようにため息をついて、呼び出しの件について教えてくれた女子生徒にお礼を言ってから校長室に向かった。
そこで頼まれたのは、明日から同学年に編入してくる生徒の生活をサポートすることだった。
最初はなんて面倒なことを、と思ったが、次の瞬間には見知らぬ編入生へ興味を持った。二つ返事で頼みを了承してから図書館へ向かい、ホグワーツの歴史に関する本を数冊読んでみたが、やはりここ数百年のうちに編入生が来たという記述はなかった。
しかも校長の話によれば、その編入生の少女は純血ながら両親と生き別れたことでマグルに育てられていたらしい。生まれつき魔力があったのだが、魂の奥底に封じ込められていて、つい先日それが解き放たれたとか。ここまでくると、流石に不信感や違和感を感じざるを得ない。
(OWL試験があるこの年に、魔法に触れたことのないマグル同然の少女が編入だなんて、おかしいにもほどがある…。まさか僕を怪しんだダンブルドアの差し金か?いや、それにしたってマグルもどきはないだろう…)
そこまで考えて、何の情報もない中でこれ以上考えても無駄だと判断し、リドルは明日実際に対面してからその編入生に対する対応を考えることに決めた。
翌日待ち合わせ場所に現れたのは、英国人から見てもとても見目麗しいと感じられる東洋人の少女だった。話してみる限りでは普通のマグルのように思われたが、少女の纏う、言葉で言い表せないような不思議な雰囲気がとても奇妙だった。その『魔法界と馴染んでいない』というか、何かが『違う』雰囲気が妙に気になった。
無邪気で裏表のなさそうな笑顔を浮かべつつも、完璧すぎるそれにはなにか影を感じる。この異例の編入を遂げるだけの何かが、この少女にあることは明らかだった。
そして、オリバンダーの杖屋での1件がそれを証明してくれた。
「リドル、制服買い終わったよ」
リドルが思考を巡らせていると、目の前で大きな紙袋を持った編入生が、アズミがこちらを見上げていた。彼女の瞳の中の虹色がどろりと混ざり合うことなく動く。この異質な目こそ、この不思議さの根源なのかもしれない。
「そっか、じゃあ次へ行こうか」
笑いかけて言えば、アズミは普通の女のように笑みを返す。それでもどこか、違和感が気にかかる。そう思いながらリドルは、アズミと次の店へ向かって歩き出した。
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アズミは、大広間での挨拶も完璧な笑顔でこなしてみせた。堂々たる態度と美しい容貌に周りの男子生徒がそわそわしていることが伝わってきて不愉快だったが、その姿にリドルの興味はいっそう駆り立てられた。
(突然魔法界に来たマグルもどきが、この大広間であれだけ堂々と自己紹介できるなんてやはり奇妙だ。アズミ・エノモト …。君の持つ秘密を暴いてみせる)
リドルがそう決意した時、大広間に組分け帽子の叫ぶ声が響きわたった。