どれくらいたっただろうか。
もしかしたらまだ十秒も経っていないのかもしれない。
それでも、二宮さんの反応待っている私には、この時間が十分にも一時間にも感じる。
「…いつからだ。」
「え?」
「いつから俺の事が好きだった。」
やっと口を開いたかと思えば、予想だにしない言葉を投げかけてくる。
「…明確には、分かりません。けど、一週間前にはもう好きだった、じゃありません!現在進行形で好きです。」
「…なんだ、それ。」
過去形で言われたのが嫌で、訂正したら呆れたようにそう言われた。
そして頭を抱えて何か考え始めた。
やっぱり…
「…迷惑、ですか?」
「は?」
「ただのセフレに、好きだって言われて、困りますよね。」
また涙が溢れてしまいそうで、眉間に力を入れて我慢する。
その顔はきっと物凄い不細工だろう。
「いいんです、振ってください。それ以上同情で優しくされても、辛いので。」
「何言って…」
「振られたら、当真が慰めてくれるんで。」
「…。」
「二宮さんが同情してくれなくても、私に優しくしてくれる人はいっぱい居ますから。だから、」
「…だからなんだ。」
「っ、」
二宮さんの声は驚く程低くて怖かった。
「…ふっ、て、ください、」
怖くて声が震えた。
「ふざけるなよ。」
「あ、の、」
「同情だけで優しく出来るほど俺の性格は良くない。」
「…ん?」
「それに、好きでもない女抱ける程節操無しでも無い。」
「つまり…?」
「…まだわかんねぇのか?」
そう言った顔は少しだけ照れくさそうだった。
「もしかして、二宮さん、私の事…好きですか?」
「…悪いか。」
そう言って私を睨むが、全然怖くなかった。
どういう事だ?私が好きな二宮さんは、私の事が好き?
「両想いですか?私達…」
「…。」
「二宮さん、両想い?」
「…みたいだな。」
悪くない、みたいな顔で私の頭を優しく撫でる。
その手があまりに暖かくて、思わず口元が緩む。
「…へへ、私、二宮さんの彼女ですか?」
頭にある手に自分の手を重ねて尋ねてみる。
さっきまで地獄のどん底にいた気分なのに、今では天国に居るようだ。
ふわふわと上機嫌な私を見て、嬉しそうに二宮さんも笑っていたが、突然真顔になって口を開いた。
「俺と付き合うからには、俺以外と寝るんじゃねえぞ。」
「…あ、はい。」
有無を言わさぬその圧に嫌だ!なんて言える訳もなく、なんて言ってセフレを切っていこうか悩む。
「…それと、」
「…?」
「あー、当真。」
「当真?当真が何ですか?」
なんとも歯切れが悪いのでとても気になる。
「その、仲良くしすぎるなよ。」
「…え。……やきもち?」
「…うるせえ。」
「やきもちだ!」
まさかただの友達当真にやきもちを焼くなんて!しかも二宮さんが!
言い表せぬ喜びに顔が緩みっぱなしになってしまう。
まさか、好きな人に想って貰えることがこんなにも嬉しくて、満たされることだなんて、初めての感覚に幸福を感じた。
「言って置くけどな、付き合う以上俺の彼女として振舞えよ。」
「えと、具体的にどうやって?」
「そうだな、一人が寂しくても男を引っ掛けない、男と仲良くし過ぎない、誰彼構わずついて行かない、自分を大事にする、それと、」
「多い、多い。それに、寂しい時二宮さんがいなかったら、どうすればいいんですか。」
「その時は家で待ってろ。なるべく急いで帰るから。」
そう言って鍵を渡された。
「それと、俺もお前の事好きだからな。名前。」
そう言って、私の唇に二宮さんの唇が触れた。
初めてのキスは少し苦い大人の味だった。
私は今日、恋を知って、今少しだけ大人になった。