13.The girl knows love.

どれくらいたっただろうか。

もしかしたらまだ十秒も経っていないのかもしれない。

それでも、二宮さんの反応待っている私には、この時間が十分にも一時間にも感じる。

「…いつからだ。」

「え?」

「いつから俺の事が好きだった。」

やっと口を開いたかと思えば、予想だにしない言葉を投げかけてくる。

「…明確には、分かりません。けど、一週間前にはもう好きだった、じゃありません!現在進行形で好きです。」

「…なんだ、それ。」

過去形で言われたのが嫌で、訂正したら呆れたようにそう言われた。

そして頭を抱えて何か考え始めた。

やっぱり…

「…迷惑、ですか?」

「は?」

「ただのセフレに、好きだって言われて、困りますよね。」

また涙が溢れてしまいそうで、眉間に力を入れて我慢する。

その顔はきっと物凄い不細工だろう。

「いいんです、振ってください。それ以上同情で優しくされても、辛いので。」

「何言って…」

「振られたら、当真が慰めてくれるんで。」

「…。」

「二宮さんが同情してくれなくても、私に優しくしてくれる人はいっぱい居ますから。だから、」

「…だからなんだ。」

「っ、」

二宮さんの声は驚く程低くて怖かった。

「…ふっ、て、ください、」

怖くて声が震えた。

「ふざけるなよ。」

「あ、の、」

「同情だけで優しく出来るほど俺の性格は良くない。」

「…ん?」

「それに、好きでもない女抱ける程節操無しでも無い。」

「つまり…?」

「…まだわかんねぇのか?」

そう言った顔は少しだけ照れくさそうだった。

「もしかして、二宮さん、私の事…好きですか?」

「…悪いか。」

そう言って私を睨むが、全然怖くなかった。

どういう事だ?私が好きな二宮さんは、私の事が好き?

「両想いですか?私達…」

「…。」

「二宮さん、両想い?」

「…みたいだな。」

悪くない、みたいな顔で私の頭を優しく撫でる。

その手があまりに暖かくて、思わず口元が緩む。

「…へへ、私、二宮さんの彼女ですか?」

頭にある手に自分の手を重ねて尋ねてみる。

さっきまで地獄のどん底にいた気分なのに、今では天国に居るようだ。

ふわふわと上機嫌な私を見て、嬉しそうに二宮さんも笑っていたが、突然真顔になって口を開いた。

「俺と付き合うからには、俺以外と寝るんじゃねえぞ。」

「…あ、はい。」

有無を言わさぬその圧に嫌だ!なんて言える訳もなく、なんて言ってセフレを切っていこうか悩む。

「…それと、」

「…?」

「あー、当真。」

「当真?当真が何ですか?」

なんとも歯切れが悪いのでとても気になる。

「その、仲良くしすぎるなよ。」

「…え。……やきもち?」

「…うるせえ。」

「やきもちだ!」

まさかただの友達当真にやきもちを焼くなんて!しかも二宮さんが!

言い表せぬ喜びに顔が緩みっぱなしになってしまう。

まさか、好きな人に想って貰えることがこんなにも嬉しくて、満たされることだなんて、初めての感覚に幸福を感じた。

「言って置くけどな、付き合う以上俺の彼女として振舞えよ。」

「えと、具体的にどうやって?」

「そうだな、一人が寂しくても男を引っ掛けない、男と仲良くし過ぎない、誰彼構わずついて行かない、自分を大事にする、それと、」

「多い、多い。それに、寂しい時二宮さんがいなかったら、どうすればいいんですか。」

「その時は家で待ってろ。なるべく急いで帰るから。」

そう言って鍵を渡された。

「それと、俺もお前の事好きだからな。名前。」

そう言って、私の唇に二宮さんの唇が触れた。


初めてのキスは少し苦い大人の味だった。


私は今日、恋を知って、今少しだけ大人になった。