12.Kiss loneliness.

スマホの電源を入れた時、生き物の様に物凄い勢いで震えたので、若干引いたのを覚えている。


「…当真、どうしよう。」

「うわっ、これはやばいな。」

着信履歴が二宮さんで埋まっていた。LINEにも未読のメッセージが物凄い溜まっていた。

「怒ってるかな?」

「怒ってるだろうな、とりあえず今日会ってこいよ。」

「え、や、あの、今日!?」

今さっき自覚した恋の相手に会ってこいと!?

さてはこいつ楽しんでいるな?

そう思いながら当真を見つめるが、当真は至って真面目だった。

「気持ちを伝えるは早い方がいいぞ。あとにすればするほど、言えなくて後悔するから。」

「…分かった。」

妙に説得力があったので、私は茶化すことも出来ず頷いた。

「振られたら、慰めてよね!」

「…おう。」

どこか覇気がない返事だが、所詮他人事なのだろう。当真を見送り、私も二宮さんの家に向かう。


二宮さんはなんと言うだろうか?

私が二宮さんに恋をしていると知ったら。

ふざけるなと怒るだろうか、冗談を言うなとあしらうだろうか、それとも、そうか、と言って頭を撫でてくれるだろうか。

好きな気持ちが先行してあらぬ想像を掻き立てる。

そもそも、思いを伝えたらどうなるのだろう。

付き合う事になったら何をするのだろう?

手を繋いで、キスをして、抱きしめあって、sexをする。

「…だいたいやってるな。」

何だか考えれば考えるほど私はどうしたいのか分からなくなってくる。


思考が進むにつれて歩くスピードが落ちる。

ついには道端で立ち止まってしまった。


そもそも、二宮さんは私の事どう思ってるのかな?


二宮さんはいい人だから、私が哀れで優しくしてくれてるんじゃないのかな?

考える程に分からなくなって、目の奥が熱くなる。


もうここで引き返してしまおう。

あとすこしで二宮さんのマンションに着くという所で、踵を返した。

「っわぷ!」

勢いよく帰ろうと進んだら、誰かにぶつかってしまった。

謝ろうと思って顔を上げると、そこには今一番会いたくない人がいた。

「おい、何逃げてんだ。」

「…腕、掴まれてちゃ逃げれませんよ。」

反射的に走り出した私を、二宮さんは腕を掴んでしっかりと引き止めている。

「…怪我はもう治ったのか。」

「見ての通り、ほぼ完治しましたよ。」

何となく顔を見れないでいる私に、そうか。と優しい声音で返事をくれた。

どんな顔でそんなに優しい声を出しているのか、ふと気になって逸らしていた顔を二宮さんに向けた。

その表情は、愛おしい物でも見るみたいに眉も目尻も下がっていて、私の心を掻き乱した。

「二宮さん家、行ってもいいですか?」

「ああ、構わないが…何かあったのか?」

安堵の表情が少しだけ曇った。

私の一言で表情を変える二宮さんに嬉しいような、それが同情なのかもと悔しいような、複雑な気持ちになる。

「聞いて欲しい事が、あるんです。」

そう言えば全部分かったみたいな顔して、掴んでる腕を優しく引いて部屋まで連れてってくれる。

前を歩く二宮さんがどんな顔しているのか分からなくて、何だか怖くて、移動中の会話は無かった。

部屋に入れてもらって、私をソファに座らせると、二宮さんはキッチンに消えた。

なんて切り出せばいいのか分からず、頭の中で言葉をいくつも用意するが、どれもしっくりこない。

「…ん。」

「ありがとうございます、」

うんうんと頭を抱えている私に、二宮さんはマグカップを渡してくれる。

ホッとするような甘い香りに一週間前の事を思い出す。

一口飲むとあの日とは全く違う味に感じて涙が溢れた。

「…すまん、泣くほど嫌だったか?ココア。」

珍しく慌てている二宮さんに愛おしさが溢れてくる。

「…好きです。」

「そうか、それは良かった。」

「ココアじゃなくて、」

「は?」

「二宮さんが、好きです。」

用意していた言葉の中でも取り分けシンプルで在り来りな言葉が自然と零れた。