私、苗字名前には、小さな夢がある。
それは、親の手を離れる事。
何かと干渉したがる両親のおかげで、誰かの指示がないと動けなかった私。
それがおかしいことに気づいたのは中学生になってから。
仲良くなった子と、どの部活に入るか決めている時だった。
「名前ちゃん、バレー部に一緒に入ろ!」
「うん!お母さんに聞いてみるね。」
結局、習い事があるからという理由で、活動日数が少ない美術部に入部した。
もちろん親が決めた。
親の決定に疑問を感じたのはその時が初めてだった。
でも、当時の私にとって親は神に等しかったので、反抗など出来ず、バレー部に誘ってくれた子とはだんだん疎遠になっていった。
それから私が反抗したのは一度きり。
高校受験の時だった。
私の志望校を親が決めたからだ。
親が通わせたがったのは、三門市一のお嬢様校、星輪女学院。
だが、私が行きたかったのは当時仲の良かった子が多く進学する三門市立第一高等学校。
私立のお嬢様校と公立の第一高等学校どっちも受けることになり、受かりたくない私は試験で手を抜き、見事公立の第一高等学校に入学した。
その出来事から私の親へ対する反抗心は密かに燃え続け、高校の卒業を機に一人暮らしを始め、進学した大学を自主退学した。
まあ、さすがにその行動に親は大激怒。
既に収めていた大学費を全額おやに返金するためにバイトをかけ持ちして昼夜問わず働いている。
「…はあ、なかなか貯まらないな〜。」
通帳を見ながら一人歩いていると、私の前で誰かが足を止めた。
「こんな道端で通帳見てると、色々危ないよ。」
「…はあ、?」
その人は首にサングラスを掛けていた。
来ているジャージにはボーダーのエンブレムが付いている。
「あれ、もしかして、気づいてない?」
「…何がでしょうか?」
「俺、高校で同じクラスだった迅悠一。」
「…え、誰。」
中学同様高校に通っている時も習い事を続けさせられていたので、高校三年間は親からどうやって離れるか考えるか、寝てるか、ちょっと仲のいい子達と話すかしかしていなかった。
「…あらら、苗字ちゃんだよね?」
「はい、そうですが。」
「忘れちゃった?一回だけ夜遊びした事あるんだけど。」
「……あ、ああ!」
今思い出した。
私が親に反抗したのは一度きりじゃない。
高校の時にも嫌気がさして、一度クラスの男の子と夜遊びした事があった。
当時捜索願が出され、警察沙汰になりかけて、めちゃくちゃ怒られたのだ。
「完全に忘れてたね。」
「…あまり、いい思い出じゃなかったから。」
思い出したくもない黒歴史。
それを共有した相手との再会。
今日はなんて日だ。