泣いたせいで晴れた目元を隠しながら電車に乗って、迅くんと二人並びながら家へと向かう。
大事な話ってなんだ?
やっぱり本命が出来たのかな?
なんて、一人で考えながら歩くもんでたまに電柱にぶつかりそうになる所を迅くんが腕を引いて避けさせてくれる。
その度に私の心臓は不規則に動いた。
家に着いて、迅くんを招き入れてリビングへと行く。
「…今日は綺麗だね。」
「今朝は時間に余裕があったからね。」
他愛も無い話が出来るのが妙に嬉しくって、緩む顔を見られたくなくて台所に隠れた。
「迅くん何飲みたい?」
「んー、なんでもいい。」
「…はーい、」
そんなやり取りをしながら顔を元に戻してお茶を持ってリビングへと戻った。
お茶を互いの前に置いて座り、少し息を着いた。
「…苗字さん、」
「っ、迅くん!ドラマでも見ない!?」
彼の口から何を言われるのか、それが怖くて私は急いでテレビにリモコンに手を伸ばした。
その手を迅くんが掴んで、見ないよ。と言って私を座り直させる。
「…俺、苗字さ」
「あ゛ーーーーー!」
「えっ!?」
「う゛あ゛ーーーーー!」
迅くんが何かを言おうとしたので必死に大きな声を出して、耳を塞いで聞こえないようにした。
聞きたくない。それがどんな話であろうと、今は聞きたくない。
「っ苗字さん!?」
「あ゛ーーー!あ゛ーーーー!」
「っち、あーもう!」
「あ゛ーーっ、!?」
迅くんは焦ったような表情で舌打ちをして、私の両手首を掴んで口を塞いだ。
迅くんの唇で。
「…うるさいよ。俺の話、ちゃんと聞いて?」
「…っ、はい。」
文字通りキスで唇を塞がれた。
私の心臓はもうものすごいリズムを刻んでいる。
「…俺ね、この関係を終わりにしたくて、」
「…そう、」
迅くんの言葉はやっぱりと言うべきか、セフレ終了のお知らせだった。
「だから、」
「分かった!私は意外と潔い女だよ!まかせっ、てよ、」
これ以上迅くんの口から続きの言葉を聞きたくなくて、遮るようにして話し始めた言葉は最後まで言い切る前に詰まってしまった。
本日二度目の涙である。
ああ、驚いた。私は自分で思っているよりも、迅くんとの関係が気に入っていたらしい。
次から次へと流れ出る涙を止める方法など分からず、驚いている迅くんから顔を背けるので精一杯だった。
「…っ、ごめっ、ん、」
「…なんで?何で泣いてんの?」
焦った声で迅くんが私の背中に手を添えた。
「…だっ、て、本命がっ、できっ、たんでしょ?」
「…は?苗字さんは馬鹿だなあ。」
久しぶりに聞いたその台詞に私はムキになってしまう。
「っな!?」
「俺が言いたいのは、セフレは終わりにして恋人になろって事。」
「…は?」
「…俺は、多分苗字さんの事、好き、なんだけど。」
そう言った迅くんの顔は少しだけ紅い。
照れているのだろうか?
私は号泣しているのに、迅くんは照れている。
そして、さっき迅くんは多分私の事が好き。と言った。
タブンスキ?
「…なっ、にそれ?」
「っえ!?告白したんだけど、伝わらなかった?」
焦る迅くんに?を浮かべる私。
告白?スキ?好き!?
「っ、え、」
「…真っ赤。やっと理解した?」
その表情はとても楽しそうだ。
「スキって、その、LIKE的な?」
「いや、LOVE的な。愛してるの好きだよ。」
「っな!何を!」
迅くんは完全に私をからかっている。
屈辱だ。
「…で、苗字さんは?俺の事好き?嫌い?」
「…*うぅ〜、」
今ここでその聞き方はずるいと思ったが、こんなに顔を暑くさせておいて言い逃れなんて出来はしないだろう。
もう認めるしかないようだ。
「…多分、好き。です。」
「そう、多分?酷いな〜、」
「っ、迅くんだって多分って、いっ、ん!?」
またしても迅くんは私の口をキスで塞いだ。
「多分じゃないよ。俺は苗字さんが好き。」
「…!!!」
キスどころかそれ以上の事もしているはずなのに、物凄く恥ずかしい気持ちになる。
そんなことを思って赤面している私を迅くんは満足げに抱きしめて、ニコニコと笑っていた。
遠回りした私たちの関係は今日やっと落ち着いた。